モーツァルト – ピアノソナタ第14番 ハ短調 K.457

【スプートニクの恋人】の中のモーツァルト

ときおり風が強く吹いて、
観覧車がふらりと揺れた。
彼女は目を閉じて、
架空の鍵盤の上で小さく指を動かしながら、
モーツァルトのハ短調のソナタを演奏してみた。
とくにこれという理由もなく、
彼女は子供のころ弾いたその曲をいまでもそっくり暗譜していた。
でもゆるやかな2楽章の途中で頭がぼんやりかすんできた。
そして彼女は眠りに落ちた。

スプートニクの恋人

スイスの遊園地で、
一晩観覧車に閉じ込められるミュウ。

双眼鏡で、
アパートメントの自分の部屋をもう一度眺めてみる。

ベッドルームの窓の中に、
裸の男の姿が見える。

男は、
フェルナンド。

それから、
一人の女が姿を見せる。

それは、
ミュウ自身だった。

そして、
ミュウは失われる。

ピアノソナタ第14番 ハ短調 K.457

ここで出てくるモーツァルトのハ短調のソナタ、
それはピアノソナタ第14番 ハ短調 K.457しかない。

そしてこの14番は村上春樹【ダンス・ダンス・ダンス】の中のモーツァルト2で、
既に1度取り上げている。

マリア・ジョアン・ピリス

前回は、
グレン・グールドのピアノだった。

今回は、
マリア・ジョアン・ピリスで。

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