チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ

ジャズ・レコード

もちろん実在しない『チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ』

1963年の夏、
チャーリー・パーカーは再びアルトサックスを手に取り、
ニューヨーク近郊の録音スタジオでアルバム一枚ぶんの吹き込みをおこなったのだ。
そのアルバムのタイトルは「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」!

―村上春樹,一人称単数,チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ,p52

この作品のタイトルでもある『チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ』、
もちろんそんなレコードはこの世界には実在しない。

そもそも1963年にこの世界では、
バードは既に存在していない(1955年没)。

もしかしたら違う時間軸の世界になら存在するかもしれないが、
少なくともこの世界でその音を聴いたものは誰も居ない。

でもまあ、
こういった『If』の話は面白いし楽しい。

『チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ』収録曲

それでこのアルバムはいったいどんなアルバムなのか?
といえばこんな感じだ。

チャーリー・パーカーとアントニオ・カルロス・ジョビン、
いったいどこの誰に、
そのような並外れた顔合わせを予測できただろう?
ギターはジミー・レイニー、
ピアノはジョビン、
ベースはジミー・ギャリソン、
ドラムはロイ・ヘインズ。
名前を目にするだけで胸躍る、
魅力的なリズム・セクションではないか。
そしてもちろんアルト・サックスはチャーリー・(バード)・パーカー。

―村上春樹,一人称単数,チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ,p54

更に手が込んでいて、
曲名までが記されている。

A面
(1)コルコヴァド
(2)ワンス・アイ・ラヴド(O Amor em Paz)
(3)ジャスト・フレンド
(4)バイバイ・ブルーズ(Chega de Saudade)
B面
(1)アウト・オブ・ノーホエア
(2)ハウ・インセンシティヴ(Insensatez)
(3)ワンス・アゲイン(Outra Vez)
(4)ジンジ

―村上春樹,一人称単数,チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ,p54

アルバムは実在していなくても、
ここに出てくる曲そのものは実際に存在しているものばかりだ。

Corcovado

そんなわけで、
ここに出てくる8曲の実在する演奏を聴いていこう。

まず最初は、
アントニオ・カルロス・ジョビン自ら作詞も手掛けた数少ない作品の一つ『コルコヴァド(Corcovado)』。

1960年のジョアン・ジルベルトのアルバム、
『O Amor、o Sorriso ea Flor』で世に出た曲。

数多くの人たちがこの曲を吹きこんでいるけど、
今回は1964年にリリースされた『Getz/Gilberto』から。

O Amor em Paz

さて架空のアルバム『チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ』、
2曲目は『ワンス・アイ・ラヴド(O Amor em Paz)』。

アントニオ・カルロス・ジョビンと、
ヴィニシウス・ヂ・モライスの黄金コンビの作品。

デイヴィッド・サンボーンが『チャーリー・パーカーは別格として、キャノンボールがアルト奏者の最高峰である』、
と語ったキャノンボール・アダレイ1963年の『Cannonball’s Bossa Nova』から。

Just Friends

3曲目は1931年ジョン・クレナーが作曲、
サム・M・ルイス作詞の『ジャスト・フレンド(Just Friends)』。

もちろんチャーリー・パーカー、
1950年の『Charlie Parker with Strings』から。

Chega de Saudade

A面の最後はやはりアントニオ・カルロス・ジョビン作曲、
ヴィニシウス・デ・モラエス作詞の『バイバイ・ブルーズ(Chega de Saudade)』。

英語のタイトルだと、
『No More Blues』。

ジョアン・ジルベルト1959年の『Chega de Saudade』に吹き込まれた、
ある意味最初のボサノヴァの曲の1つ。

1962年ポール・ウィンター・セクステット、
『Jazz Meets The Bossa Nova』から。

Out of Nowhere

ジョニー・グリーン作曲、
エドワード・ヘイマン作詞の1931年の曲『アウト・オブ・ノーホエア(Out of Nowhere)』。

最初に録音したのは、
ガイ・ロンバート&ロイヤル・カナディアンズ。

チャーリー・パーカーの演奏だけでもいくつかあるけど、
今回は1950年の『Charlie Parker Sextet』の音源。

マイルス・デイヴィスが、
参加しているやつだね。

Insensatez

またもや登場のアントニオ・カルロス・ジョビン作曲、
ヴィニシウス・デ・モラエス作詞のコンビで『ハウ・インセンシティヴ(Insensatez)』。

スタン・ゲッツ/ルイス・ボンファ、
1963年の『Jazz Samba Encore!』から

Outra Vez

アントニオ・カルロス・ジョビン作曲の、
『ワンス・アゲイン(Outra Vez)』。

1963年スタン・ゲッツがローリンド・アルメイダと共演したもので、
1966年になってリリースされた『Stan Getz With Guest Artist Laurindo Almeida』から。

DINDI

アントニオ・カルロス・ジョビン作曲、
アロイージオ・ヂ・オリヴェイラ作詞の『ジンジ(DINDI)』。

タイトルのジンジはブラジルの歌姫で、
オリヴェイラの妻シルヴィア・テレスの愛称。

1965年チャーリー・バードのアルバム、
『Brazilian Byrd』から。

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