ヴィヴァルディ – 協奏曲集『調和の幻想』作品3

record-player

村上春樹【1973年のピンボール】で流れる音楽たち

村上春樹『1973年のピンボール』は、
1980年『群像』3月号で発表された。

前作の『風の歌を聴け』が、
1979年『群像』6月号だからそこからまだ1年も経っていない。

そして6月には単行本化されて発売、
この作品も『風の歌を聴け』同様に芥川賞候補にもなっている。

しかしこの時の受賞者はなし、
またもや落選となってしまう。

表紙の絵は、
やはり『風の歌を聴け』同様に佐々木マキ。

3年後の1983年には文庫化されていて、
ボクが最初に読んだのはこの文庫。

前回の『風の歌を聴け』は1970年の夏の話だったけど、
この物語は1973年9月に始まり11月に終わる。

そしてこの物語は1章から25章まであって、
それは『僕』の物語と『鼠』の物語に分かれて進行していく。

そんな『1973年のピンボール』の中で流れている音楽たちを、
関連曲と共に聴いていくシリーズ。

今回は、
その第1回目。

二千枚のレコード・コレクション

ところで九号館にはウォーター・クーラーと電話と給油設備があり、
二階には二千枚のレコード・コレクションと
アルテックA5を備えた小奇麗な音楽室まであった。
それは(例えば競輪場の便所のような匂いのする八号館に比べれば)天国だった。
彼らは毎朝熱い湯できちんと髭をそり、
午後は気の趣くままに片端から長距離電話をかけ、
日が暮れるとみんなで集ってレコードを聴いた。
おかげで秋の終りまでには、
彼らの全員がクラシック・マニアになっていたほどだった。

―村上春樹,1973年のピンボール

日が暮れるとみんなで集ってレコードを聴いたおかげで、
秋の終りまでには全員がクラシック・マニアになっていたという二千枚のレコード・コレクション。

1973年の二千枚のレコード・コレクションは、
全てクラシックだったんだろうか?

全員がクラシック・マニアになっていたというのだから、
きっとそうなのかもしれない。

どんな音楽でもそうだけど、
ずっと聴き続ければ案外好きになるものなのだ。

どんなに長く一緒に居ても、
好きにならない女の子はいても音楽は違ったりするものなのだ。

そういう意味では、
人は人に対してよりも音楽に対しては寛容なのかもしれない。

ちなみにこのコレクションがどんな内容だったのか?
については特に触れられていない。

でもまあイメージとしては『古くて素敵なクラシック・レコードたち』や、
その後続く『更に、古くて素敵なクラシック・レコードたち』に出てくるようなものなんだろう。

そんな中で、
この曲が流れている。

アントニオ・ヴィヴァルディ – 協奏曲集『調和の幻想』作品3

気分良く晴れ渡った十一月の午後、
第三機動隊が九号館に突入した時には
ヴィヴァルディの「調和の幻想」が
フル・ボリュームで流れていたということだが、
真偽のほどはわからない。
六九年をめぐる心暖まる伝説のひとつだ。

―村上春樹,1973年のピンボール

アントニオ・ヴィヴァルディ1711年出版、
全12曲からなる協奏曲集『調和の幻想(L’estro Armonico)』作品3。

ヴィヴァルディは音楽教師をしていたピエタ孤児院で、
孤児の子供たちに楽器の教育をするための協奏曲を作っていた。

この楽器の教育は、
貴族などを招いて演奏会を開き孤児たちが引き取られていくためのもの。。

それらの協奏曲の中から、
12曲が選ばれて『調和の幻想(L’estro Armonico)』として出版されたわけだ。

曲の配列は、
長調→短調→長調……となっている(最後だけ短調→短調→長調だけど)。

まるで、
『僕』の物語と『鼠』の物語に分かれて進行していくかのようだ。

もしかすると、
そういうことでこの曲を本の中で流したのかもしれない。

曲の構成

ちなみにその12曲は、
こんな感じだ。

通して聴くとなると、
40曲で2時間前後になる。

ただ、
それぞれは短くてさまざまな音が流れるので聴いていて飽きない。

アントニオ・ヴィヴァルディ – 協奏曲集『調和の幻想』作品3

第01番(RV549):4つのヴァイオリンとチェロのための協奏曲 ニ長調(3楽章形式)
第02番(RV578):2つのヴァイオリンとチェロのための協奏曲 ト短調(4楽章形式)
第03番(RV310):ヴァイオリン協奏曲 ト長調 (3楽章形式)
第04番(RV550):4つのヴァイオリンのための協奏曲 ホ短調 (4楽章形式)
第05番(RV519):2つのヴァイオリンのための協奏曲 イ長調 (3楽章形式)
第06番(RV356):ヴァイオリン協奏曲 イ短調 (3楽章形式)
第07番(RV567):4つのヴァイオリンとチェロのための協奏曲 ヘ長調 (4楽章形式)
第08番(RV522):2つのヴァイオリンのための協奏曲 イ短調 (3楽章形式)
第09番(RV230):ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 (3楽章形式)
第10番(RV580):4つのヴァイオリンとチェロのための協奏曲 ロ短調 (3楽章形式)
第11番(RV565):2つのヴァイオリンとチェロのための協奏曲 ニ短調 (3楽章形式)
第12番(RV265):ヴァイオリン協奏曲 ホ長調 (第3楽章形式)

第三機動隊が政治的グループの占拠している大学の九号館に突入する時、
この中のどれかがフル・ボリュームで流れていたわけだ。

何番が流れていたのか?
は書かれていない。

どれか相応しいだろう?
と考えながら聴いてみても正解はわからない。

Antonio Vivaldi, I Musici – L’Estro Armonico 12 Concerti Op. 3

まあそういうわけなので、
今回は1962年に吹き込まれたイ・ムジチ合奏団による全曲を。

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ – オルガン協奏曲

ヨハン・ゼバスティアン・バッハが作曲した『オルガン協奏曲』、
と言っても他の作曲家が作曲した協奏曲をバッハがオルガン独奏曲として編曲したもの。

その中に、
この『調和の幻想』を編曲したものがある。

全6曲のうち、
第1・4番はザクセン=ヴァイマル公子ヨハン・エルンストの協奏曲の編曲。

そして、
第2・5番が『調和の幻想』を編曲したもの。

第3番は、
ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲『ムガール大帝の編曲。

第6番は、
原曲が不明で偽作の疑いがある作品。

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ – オルガン協奏曲

第1番 ト長調 BWV 592
 第1楽章 (アレグロ)
 第2楽章 グラーヴェ
 第3楽章 プレスト
第2番 イ短調 BWV 593
 第1楽章 (アレグロ)
 第2楽章 アダージョ
 第3楽章 アレグロ

第3番 ハ長調 BWV 594
 第1楽章 (アレグロ)
 第2楽章 レチタティーヴォ(アダージョ)
 第3楽章 アレグロ
第4番 ハ長調 BWV 595
第5番 ニ短調 BWV 596
 第1楽章 (アレグロ―グラーヴェ)
 第2楽章 フーガ
 第3楽章 ラルゴ
 第4楽章 フィナーレ(アレグロ)

第6番 変ホ長調 BWV 597
 第1楽章 (速度指定なし)
 第2楽章 ジーグ

このオルガン・バージョン、
これがまたどれもなかなか良いのだ。

というわけで、
第2.5番をカール・リヒターのオルガンで。

ヴィヴァルディ – 協奏曲集『調和の幻想』作品3 関連 Play List

01 イ・ムジチ合奏団 – ヴィヴァルディ : 協奏曲集『調和の幻想』作品3
02 カール・リヒター – バッハ : オルガン協奏曲 第2番・第5番

【1973年のピンボール】で流れる他の音たちはこちら!

コメントしてみる お気軽にどうぞ!

タイトルとURLをコピーしました