MJQ – Space

レコード

煙草に火を点けてM.J.Qのレコードを聴いた

僕たちは食後のコーヒーを飲み、
狭い台所に並んで食器を洗ってからテーブルに戻ると、
煙草に火を点けてM.J.Qのレコードを聴いた。

―村上春樹,風の歌を聴け

M.J.Q、
The Modern Jazz Quartet。

M.J.Qのレコードというだけで、
タイトルはここでは出てこない。

ビーフ・シチューの湿っぽい熱気でひどく蒸し暑かった部屋で、
2人はM.J.Qのどのアルバムを聴いたんだろう?

地獄はもっと暑くて気が狂ってしまうと天国に連れて行かれ、
天国の壁はいつも真白でなくちゃならないから1日中壁のペンキ塗りをやらされる話。

女の子が呟いた『冷たいワインと暖かい心』、
というテレビのコマーシャルのフレーズ。

そこからテレビをあまり見ない『僕』が昔好きだったのは、
初代の『名犬ラッシー』で動物が好きだという話。

暇さえあれば一日中でも見てる女の子が、
昨日見た生物学者と科学者の討論会の話からパスツールの科学的直感力の話。

今度は食事をしながら、
女の子が質問した『僕』の大学と東京での生活の話。

そして、
食後に掛けられるレコード。

女の子のお家には、
M.J.Qのレコードがある。

もしかすると、
他にもジャズのレコードがいろいろとあるのかもしれない。

女の子が働くレコード店で『僕』が「<ギャル・イン・キャリコ>の入ったマイルス・デイビス。」と言った時、
少し時間はかかったけれどちゃんとレコードを抱えて戻ってきたのはジャズも聴くからかもしれない。

でも時間が少しかかったんだから、
『The Musings Of Miles』は女の子の家にはないのだろう。

そして、
ジャズをきくわけではなくM.J.Qみたいな音楽がただ好きなだけかもしれない。

MJQ – Space

蒸し暑さを和らげる、
身体の温度を少しだけ下げてくれると考えるとコレが思い浮かぶ。

1968年にビートルズが設立したアップル・コアのプロジェクトの一部として設立された、
アップル・レーベルからM.J.Qがリリースしたアルバム。

2枚出しているんだけど、
そのうちの1枚で1969年の『Space』。

もう1枚は『Under the Jasmin Tree』で、
これは1968年リリース。

この2枚だけをアップルで出した後は、
アトランティックから1971年に『Plastic Dreams』がリリース。

なので『Space』はこの物語の時点で、
M.J.Qの1番新しいアルバムでもある。

MJQ – Space

01 Visitor From Venus
02 Visitor From Mars
03 Here’s That Rainy Day
04 Dilemma
05 Adagio From Concierto De Aranjuez

A面はある意味実験的なサウンドで、
アルバム・タイトルに繋がるような2曲が並んでいる。

B面の方は、
バランスをとる為なのかいわゆるスタンダードが3曲並べられている。

このあと女の子はレコードを他のものに替えちゃうんだけど、
もしこのレコードなら盤をひっくり返さずにA面だけ聴いて替えたと思いたい。

もちろん、
B面だって悪いわけでは決してない。

ただこの場面では、
なんとなくだけどこのアルバムでしかもA面だけという感じがするのだ。

【風の歌を聴け】で流れる他の音たちはこちら!

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