Marvin Gaye and Tammi Terrell’s Greatest Hits

レコード・プレイヤー

彼女は笑って、レコードをマービン・ゲイに替えた。

彼女は笑って、
レコードをマービン・ゲイに替えた。
時計は8時に近くを指している。
「今日は靴を磨かなくてもいいの?」
「夜中に磨くさ。歯と一緒にね。」

―村上春樹,風の歌を聴け

この後彼女は細い肘の上に顎を載せたまま『僕』の目をのぞきこむようにして、
この間私に何もしなかったことを信じても良いと言う。

その理由を『僕』は聞くくせに、
女の子に「聞きたい?」と言われると即座に「いや」と答える。

本当は聞きたいんだけど、
「聞きたい?」なんて言われると天邪鬼だから「いや」と答えるのか?

関心なんてないけど、
一応聞いた方が良さそうな気がして聞いてみただけだから「いや」なのか?

実際何もしなかったのだから、
女の子がそう思う理由なんてどうでも良いから「いや」なのか?

そう思ってなければ食事に誘うわけもないから、
わざわざその理由まで聞くまでもないからの「いや」なのか?

この女の子はこういう答え方をすると、
きっと自分のことを段々好きになると考えての「いや」なのか?

まあ「いや」の答え方1つでいろいろと想像できるのは、
やはりなかなか面白い。

Marvin Gaye and Tammi Terrell’s Greatest Hits

さて、
レコードはマーヴィン・ゲイ。

この頃は、
まだ『What’s Going on』はリリースされていない。

1970年といえばマーヴィン・ゲイのデュエット・パートナーだった、
タミー・テレルが24歳の若さで脳腫瘍でこの世を去った年だ。

マーヴィン・ゲイは一時期音楽活動を休止させてしまうが、
1971年1月に『What’s Going on』をリリースして違うステージへと移ることになる。

ではどのアルバムだろう?
直近のオリジナル・アルバムなら『That’s the Way Love Is』。

ただ今回は、
タミー・テレルが亡くなってすぐにリリースされたコンピ・アルバムも悪くない。

1970年7月4日にリリース(日本での発売はわからないけれど)された、
『Marvin Gaye and Tammi Terrell’s Greatest Hits』だ。

Marvin Gaye and Tammi Terrell’s Greatest Hits

01 Your Precious Love
02 Ain’t No Mountain High Enough
03 You’re All I Need to Get By
04 Ain’t Nothing Like the Real Thing
05 Good Lovin’ Ain’t Easy to Come By
06 If This World Were Mine
07 The Onion Song
08 If I Could Build My Whole World Around You
09 Keep On Lovin’ Me Honey
10 What You Gave Me
11 You Ain’t Livin’ till You’re Lovin’
12 Hold Me Oh My Darling

06はマーヴィン・ゲイで08と12を除いては、
アシュフォード&シンプソンの曲だ。

1984年4月1日の12時半頃、
自宅で両親の喧嘩を仲裁した際に父マーヴィン・シニアと口論になる。

激昂した父は拳銃を至近距離からマーヴィン・ゲイに向けて発砲、
2発の弾がそれぞれ胸部と肩に命中してしまい病院に運ばれる前に亡くなってしまった。

この日は、
マーヴィンの45回目の誕生日の前日。

そして、
その拳銃はマーヴィン・ゲイが父親にプレゼントしたものだった。

あまりにも悲しいニュースには、
更に悲しい付録が付いていたりするものなのだ。

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