モーツァルト – ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K.488 / 第24番 ハ短調 K.491

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【世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド】の中のモーツァルト

それからベッドに寝転んで、
ロベール・カサドシュがモーツァルトのコンチェルトを弾いた古いレコードを聴いた。
モーツァルトの音楽は古い録音で聴いた方がよく心になじむような気がする。
でももちろん偏見かもしれない。
時間はもう七時を過ぎ、
まどの外はすっかり暗くなっていたが、
それでもまだ彼女はあらわれなかった。
結局私は二十三番と二十四番のピアノコンチェルトを全部聴いてしまった。

世界の終りとハードボイルドワンダーランド

ここでは二十三番と二十四番のピアノコンチェルトと、
曲のタイトルが具体的に出てくる。

両方聴くと、
だいたい1時間弱。

彼女を待つあいだ、
簡単な夕食をつくったあとだ。

梅干しをすりばちですりつぶしてサラダ・ドレッシング、
鰯と油あげと山芋のフライとセロリと牛肉の煮物。

時間があまったので缶ビールを飲みながら、
みょうがのおひたしといんげんのごま和えも作っている。

そして、
レコードを聴くのだ。

ここでは曲名も演奏者も、
どちらも明確だ。

さすがに、
指揮とオーケストラが誰かまでは書かれていないけれど。

曲を聴いているその間、
彼女はあらわれなかった。

あきらめて次のレコードを探しているとき、
ドアのベルがなって彼女が現れる。

ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K.488

ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K.488、
こちらはモーツァルトが1786年に作曲したものだ。

この曲、
楽器編成がそれまでとは少し異なる。

オーボエの代わりに、
今まで編成になかったクラリネットが加わる。

ただ宮廷にクラリネット奏者がいなければ第1奏者がヴァイオリンに、
第2奏者がヴィオラによって演奏されるのでも良かったみたいだ。

なにしろクラリネットは、
まだこの頃は新しい楽器だったからね。

そしてこの曲は、
ティンパニやトランペットが使われていない。

またピアノ・パート全体を完全な形で書き記し(それまではスケッチ程度)、
第1楽章のカデンツァも完全に書き記されている。

カデンツァは演奏者が自由に演奏できるパートだけど、
こう弾いてねと指定したわけだ。

そして、
第2.3楽章ではカデンツァが入る機会が示されていない。

ピアニストに自由を与えない、
曲として完成度を高めるのなら間違ってはいない気がする。

Klavierkonzert Nr.23 in A-dur KV488
ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K.488

第1楽章 Allegro イ長調 4分の4拍子 協奏風ソナタ形式
第2楽章 Adagio 嬰ヘ短調 8分の6拍子 三部形式
第3楽章 Allegro Assai イ長調 2分の2拍子(アラ・ブレーヴェ) ロンド形式

ロベール・カサドゥシュ/ジョージ・セル/コロンビア交響楽団

そんなわけで当然ピアノは、
ロベール・カサドゥシュ。

ジョージ・セル指揮、
コロンビア交響楽団の演奏で。

ピアノ協奏曲第24番 ハ短調 K.491

ピアノ協奏曲第24番 ハ短調 K.491、
こちらも23番同様1786年の作曲。

この1786年は、
23.24番の他に25番も書かれている。

この頃のモーツァルトは、
自らが主催する予約演奏会の為に多くのピアノ協奏曲を書いている。

例えば前年も3曲で、
前々年に至っては6曲も書かれている。

この24番は、
数少ないモーツァルトの短調の曲。

ピアノ協奏曲では、
この24番と20番(ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466)だけが短調。

楽器編成は、
木管楽器を勢ぞろいさせた唯一の協奏曲。

Klavierkonzert Nr.24 c-Moll KV 491
ピアノ協奏曲第24番 ハ短調 K.491

第1楽章 Allegro ハ短調 4分の3拍子 ソナタ形式
第2楽章 Larghetto 変ホ長調 2分の2拍子(アラ・ブレーヴェ) ロンド形式
第3楽章 Allegretto ハ短調 2分の2拍子(アラ・ブレーヴェ) 変奏曲形式

Robert Casadesus,George Szell,Members Of The Cleveland Orchestra

こちらもカサドゥシュのピアノ、
ジョージ・セル指揮/コロンビア交響楽団の演奏で。

ちなみにコロンビア交響楽団とは言っても、
実態はクリーヴランド管弦楽団だけどね。

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