Harpers Bizarre – If We Ever Needed the Lord Before

レコードプレイヤー

プレイヤーにハーパース・ビザールの新譜をのせて針を下した。

「ねえ、もしよかったら一緒に食事をしないか?」
彼女は伝票から目を離さずに首を振った。
「一人で食事をするのが好きなの。」
「僕もそうさ。」
「そう?」
彼女は面倒臭そうに伝票を脇にやり、
プレイヤーにハーパース・ビザールの新譜をのせて針を下した。
「じゃあ、何故誘うの?」
「たまには習慣を変えてみたいんだ。」
「一人で変えて。
彼女は伝票を手もとに寄せて作業の続きを始めた。
「もう私に構わないで。」
僕は肯いた。
「前にも言ったと思うけど、あなたって最低よ。」

―村上春樹,風の歌を聴け

ずいぶんと感じが悪いのは、
出会った状況も悪かったしいろいろと勘違いされたんだから仕方がないと言えば仕方がない。

そんなことはわかっているはずの『僕』は、
それでも女の子を食事誘ってみたりする。

女の子と同じように一人で食事をするのが好きなんだけど、
習慣を変えたくて誘ってみたなんてある意味普通とは違うかもしれない。

ある意味普通とは違うかもしれないけど、
それが『僕』にとっての普通のコミュニケーションならそれも普通のことになる。

誰もが本当は違っていて、
違ってはいるんだけど多勢に寄って行ってしまい一般的普通が形成されていく。

そして寄せない人は変わっていると言われ、
下手をすると仲間外れにされたりもする。

ハーパース・ビザール

ところでハーパース・ビザールは、
この物語の舞台となっている1970年に解散してしまう。

1976年には、
テッド・テンプルを除いて再結成しているけど。

ちなみにテッド・テンプルは解散後にプロデューサーになっていて、
ドゥービー・ブラザーズやエアロスミス等々多くの作品にクレジットされている。

そんなハーパース・ビザールが、
1969年8月26日にトランス・ワールド航空840便ハイジャック事件に遭遇したのは有名だ。

航路は変更されシリアのダマスカス国際空港に着陸、
乗客・乗員127名中イスラエル人の2名を除く全員が解放された中に彼らもいたわけだ。

2名のイスラエル人も、
後に捕虜にしていたシリア人・エジプト人71人の兵士の釈放と交換で解放されている。

このハイジャックの実行犯、
ライラ・カリドは美人革命家として世界的に有名になっている。

今でいうところの、
美しすぎる女性革命家って感じか。

ティアドロップ・エクスプローズ、
1981年のアルバム『Wilder』の収録曲『Like Leila Khaled Said』。

フロントマンのジュリアン・コープは、
この曲をライラ・カリドへのラブ・ソングだと言っていた。

そのジュリアン・コープ2012年の2枚組のアルバム『Psychedelic Revolution』では、
2枚目に『Side of Leila Khaled』と名付けている。

話は逸れたけどハーパース・ビザールっていうバンド名は、
ニューヨークで1867年に創刊された世界最古の女性向けファッション雑誌『ハーパーズ・バザー(Harper’s BAZAAR)』のもじりというのも有名な話。

ヴァン・ダイク・パークスのアイディアと言われているけど、
バザーをビザール(奇怪な)に代えたものだ。

Harpers Bizarre – If We Ever Needed the Lord Before

ここでいう新譜は、
アルバムなら『Harpers Bizarre 4』だけど1969年のリリース。

日本には遅れて1970年になってから入ってきたのかもしれないけど、
そのあたりはわからない。

シングルなら『If We Ever Needed the Lord Before』かな?
1970年6月にリリースされているけどそれこそ日本に入ってきてたんだろうか?

まあわからない中、
アルバムではなくシングルの方『If We Ever Needed the Lord Before』を。

Well, if we ever needed the Lord before, we sure do need Him now
かつて主が必要だったのなら 私たちは今確かに主を必要としている

【風の歌を聴け】で流れる他の音たちはこちら!

おまけ

ティアドロップ・エクスプローズ、
『Like Leila Khaled Said』。

ジュリアン・コープ、
『Psychedelic Revolution』の『Side of Leila Khaled』。

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