モーツァルト – ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K.467

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【ノルウェイの森】の中のモーツァルト

フランスの小説が好きでジョルジュ・バタイユとボリス・ヴィアンを好んで読み、
音楽ではモーツァルトとモーリス・ラヴェルをよく聴いた。

ノルウェイの森

アルバイト先のレストランで知り合った、
伊東という同じ年の美大の油絵科にかよっている無口な男の好みのことだ。

ジョルジュ・バタイユもボリス・ヴィアンも、
モーリス・ラヴェルもフランス人だけどモーツァルトだけは違う。

モーツァルトは、
1756年にザルツブルクで生まれている。

オーストリア中北部の都市ザルツブルク、
当時はドイツ国民の神聖ローマ帝国に属する大司教領。

フランス革命によって、
領主大司教の支配が終わるから関係なくもないけど。

ロベール・カサドゥシュの弾くモーツァルトのピアノ・コンチェルト

伊東君が何を聴いていたのか?は、
この時点ではわからないけど読み進めるとこんな場面が登場する。

我々は彼が父親のところから黙って持ってきたシーバス・リーガルを飲み、
七輪でししゃもを焼いて食べ、
ロベール・カサドゥシュの弾くモーツァルトのピアノ・コンチェルトを聴いた。

ノルウェイの森

どこかで出てきた?
出てきたね。

【世界の終りとハードボイルドワンダーランド】で、
『ロベール・カサドシュがモーツァルトのコンチェルトを弾いた古いレコードを聴いた』と出てくる。

そうだった、
そうだった。

シーバス・リーガルを飲んで、
七輪でししゃもを焼いて食べる方に気が行ってスルーするところだった。

伊東君はモーツァルトの音楽の素晴らしさについて物静かにしゃべる

彼はモーツァルトの音楽の素晴らしさについて物静かにしゃべった。
彼は田舎の人々が山道について熟知しているように、
モーツァルトの音楽の素晴らしさを熟知していた。
父親が好きで三つの時からずっと聴いているんだと彼は言った。
僕はクラシック音楽にそれほど詳しいわけではなかったけれど、
彼の「ほら、ここのところが―」とか「どうだい。この―」と言った適切で心のこもった説明を聴きながらモーツァルトのコンチェルトに耳を傾けていると、
本当に久しぶりに安らかな気持ちになることができた。

ノルウェイの森

ししゃもはなくなり、
キウリとセロリを細長く切って味噌をつけてかじっている時だ。

最初キュウリではなくキウリだったから、
キウイと間違えてキウイに味噌をつけてかじる?と思ったことが蘇った。

相変わらず、
酒はシーバス・リーガル。

僕は伊東君のアパートを出て緑に電話をかけたが、
今は話したくないと言われてしまう。

ピアノ協奏曲第25番 ハ長調 K.503

23番も24番も、
あと20番も前回出てきちゃっているからね。

カサドシュの弾く、
ピアノ・コンチェルト。

カサドシュは1937年に24番を吹き込んで以来、
二・三台ピアノを含む13曲のコンチェルトを吹き込んでいる。

このうちジョージ・セルとのものが大半を占めるわけで、
主張しないカサドシュとのコンビがセルには良かったのかもしれない。

それで、
今回はピアノ協奏曲第25番 ハ長調 K.503。

といきたいところなのだが、
なぜかカサドシュは25番は吹き込んでいない。

カサドシュの25番のカデンツァの楽譜はあるのに、
妻のギャビー・カサドシュのものはあるのに本人の演奏がない。

セルはルドルフ・ゼルキンと25番を吹き込んでいるのに、
そのゼルキンが弾くカデンツァはカサドシュのものなのになぜか本人の演奏がない。

あるのかもしれないし、
見落としているのかもしれないけど。

ちなみにこの25番は1786年のもので、
1784年の14番(K.449)から続いてきたピアノ協奏曲の連作を締めくくる曲だ。

第1楽章のカデンツァは、
モーツァルト自身のものは残されていない。

そして、
第2・3楽章にカデンツァはない。

Klavierkonzert Nr.25 in C-Dur, KV 503
ピアノ協奏曲第25番 ハ長調 K.503

第1楽章 Allegro maestoso ハ長調 4分の4拍子 ソナタ形式
第2楽章 Andante ヘ長調 4分の3拍子 ソナタ形式
第3楽章 Allegretto ハ長調 4分の2拍子 ロンド形式

このハ長調のコンチェルトは、
よく前作ハ短調の24番とペアと言われる。

他にも、
この短調とハ長調のペア的スタイルがいくつかある。

例えばピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466と、
ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K.467とか。

交響曲第40番 ト短調 K.550と、
交響曲第41番 ハ長調 K.551とか。

弦楽五重奏曲第3番 ハ長調 K.515と、
弦楽五重奏曲第4番 ト短調K.516とかね。

ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K.467

そんなわけで、
20番とペアとも言うべきピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K.467にしよう。

これなら、
セルとのものがある。

この曲は、
1785年のもの。

Klavierkonzert Nr.21 in C-Dur KV 467
ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K.467

第1楽章 Allegro maestoso ハ長調 4分の4拍子 協奏ソナタ形式
第2楽章 Andante ヘ長調 2分の2拍子 三部形式
第3楽章 Allegro vivace ハ長調 4分の2拍子 展開部のないソナタ形式

ロベール・カサドゥシュ/ジョージ・セル

ただ、
伊東君の家で聴いたのはきっと23・24番あたりなんだろうけど。

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