12 Best Songs with Spring in the Title

spring

オリジナルのカセットテープ

昔々いろいろな曲をレコードやCDから取り出して、
オリジナルのカセットテープをつくったものだ。

例えば好きなアーチストのマイ・ベストとか、
ドライヴ用とかね。

ある時代の音楽好きの人だったら、
誰しも経験したことがあるはずだ。

狭い選択肢の中から曲を取り出し、
順番を考えて編集していく作業はそれはそれで結構楽しかった。

それが今では、
いつでもどこでも自由に7,000万曲以上を持ち歩くことができる。

つまり、
好きな時に好きな曲をピックアップして好きなだけ聴けるということだ。

もちろんその中から自分で曲を選んで並べて、
いろんなプレイリストだって簡単につくれてしまう。

どこにもないプレイリスト

そんなことを考えていたら、
久しぶりにまたつくってみたくなった。

とは言え、
今更カセットテープでつくるようなことはしない。

先日村上春樹氏自身がDJを務めるTOKYO FMのラジオ番組で、
ロシアのウクライナへの侵攻を受けて『村上RADIO特別版 戦争をやめさせるための音楽』が放送された。

所有するレコードやCDから反戦や命の尊さを訴える作品を約10曲選んで、
背景となった社会情勢や自ら訳した歌詞と共に紹介するというもの。

その前にここでも『10 Anti-War songs』を、
ということでつくったのがその気になったもう1つのキッカケかもしれない。

そんなわけで、
テーマを決めて『〇〇 Best Songs About 〇〇 (with 〇〇 in the Title)』でもつくろうかなと。

この『〇〇』には、
数字とテーマが入るわけだけどそれはある意味の『縛り』だ。

そういう縛りがあると、
いろんな曲を思い出して楽しく並べられる。

それは、
どこにもないプレイリスト『Nowere Playlist』だ。

Best Songs with Spring in the Title

いよいよ春めいてきたことだし、
タイトルに『Spring』が付く女性ジャズ・ヴォーカルを聴くのも悪くない。

というわけで、
今回は『Best Songs with Spring in the Title』。

そういえば『村上RADIO』でも、
先日のテーマは『~春よ来い、春待ちソングズ2020~』だったな。

Blossom Dearie – They Say It’s Spring

Darling I thought we knew
That it wasn’t spring
‘Twas you…

Marty Clark/Bob Haymes – They Say It’s Spring

ねえダーリン
それは春だったからじゃないわよね
あなただったからだわ…

こんなこと言われたら、
ちょっと照れるね。

春がタイトルに入っている最初の曲は、
昔々一目惚れならぬ一聴惚れだったブロッサム・ディアリーが唄う『They Say It’s Spring』。

彼女が1956年にレコーディングして、
翌年1957年にリリースした『Blossom Dearie』というアルバムがある。

そのオリジナル盤には入っていないんだけれど、
この時のセッションで吹き込まれた曲なんだろう。

1989年に出たCDで、
ボーナス・トラックとして収められている曲だ。

この人の声って、
好みはもちろんあるだろうけど初めて聴いた時から好きになる人はかなり好きになるはずだ。

もちろん、
異常に上手い女性ジャズ・ヴォーカリストは沢山いる。

けれど、
その中にあってもこの個性的な声は決して引けを取らないと思う。

Sarah Vaughan – Come Spring

Come Spring
Come back the green and beautiful things
Come back my love
While stars above
Are all awakening…

Perry Stevens/Alan Miller – Come Spring

春よ来い
木々の緑や素晴らしいできごとよ戻ってきて
私の愛も戻ってきて
星が空に輝いているあいだに…

さて、
2曲目は『Come Spring』。

春だけれど、
ちょっと切ない内容だ。

本当は楽しいはずの春だけど、
切ない内容は一層切なさを際立たせる。

元々この曲は、
1955年にキティ・カレンがリリースしたもの。

サラ・ヴォーンのヴァージョンは、
1964年のアルバム『Sweet ‘n’ Sassy』に収められている。

このアルバム、
アレンジがとても良いんだけど誰かと言えばラロ・シフリンなのだ。

誰もが耳にしたことがあるだろう映画『燃えよドラゴン』や、
TVの『スパイ大作戦』などの音楽を手掛けた人だ。

この曲でも、
印象的なアレンジが施されていてそれが結構効いてる。

Ella Fitzgerald – Spring is Here

Spring is here! Why doesn’t my heart go dancing?
Spring is here! Why isn’t the waltz entrancing?
No desire, no ambition leads me
Maybe it’s because nobody needs me…

Lorenz Hart/Richard Rodgers – Spring is Here

春本番なのになぜ私の心は踊らないのだろう?
まさに春なのにワルツにときめくことがないのはなぜ?
欲しいものもやりたいこともないわ
誰にも必要とされていないから…

これも前曲同様、
春だからって決して楽しいわけじゃあないという曲。

まあ、
そんな春だってもちろんある。

3曲目は、
エラ・フィッツジェラルド。

元々は、
1938年のミュージカル『I Married an Angel』の為の曲『Spring is Here』。

1930年〜40年代にかけて数々のスタンダード・ナンバーを世に送り出した、
リチャード・ロジャースが作曲でロレンツ・ハートが作詞。

インストだと、
やはりビル・エヴァンスのヴァージョンが良いかな。

Billie Holiday – Some Other Spring

Some other spring
I’ll try to love
Now I still cling
To faded blossoms
Fresh from worn
Left chrushed and torn
Like the love affair I mourn…

Arthur Herzog Jr./Irene Kitchings – Some Other Spring

また春が来たら
恋でもしてみよう
今は色褪せた花にしがみついていたとしても
咲いた途端踏みつけられてしまった花は
まるで私の悲しい恋のよう…

4曲目はビリー・ホリデー、
1956年に吹き込まれた『Some Other Spring』だ。

これも楽しい春、
浮かれた春という曲ではない。

この歌、
もちろんいろんな人が唄っているけどやはりこれが1番良いかな。

エラのヴァージョンもあるんだけれど、
この曲に関してはやはりビリー・ホリデーなのだ。

曲を書いたのは、
アイリーン・ウイルソン。

彼女が支えてきた旦那テディ・ウイルソンに捨てられ、
ビリー・ホリデーとコールマン・ホーキンスに相談している時に降りてきた曲らしい。

Lee Wiley – Spring Will be a Little Late This Year

Spring will be a little late this year
A little late arriving, in my lonely world over here
For you have left me…

Frank Loesser – Spring Will be A Little Late This Year

今年の春の訪れはきっと少し遅くなるはず
この孤独な世界では少し足踏みしているわ
あなたがわたしを置いていってしまったから…

5曲目は、
元々1943年にフランク・レッサーが書いた曲。

1944年の映画『Christmas Holiday』に登場した、
これまた楽しい春らしからぬ『Spring Will be a Little Late This Year』。

とはいえ『Yes time heals all things So I needn’t cling to this fear』、
時が全てを癒してくれるからいつまでも囚われたりはしないと前向きではある。

映画では、
ディアナ・ダービンが唄っている。

MGMの重役が太った方を追い出せという指示を出して、
間違えられて契約解消になったという話の人だね。

実はその重役が想定していたのは、
ジュディ・ガーランドだったというオチがある。

このリー・ワイリーのヴァージョンは、
1971年のアルバム『Back Home Again』に収録されている。

ここで流れるディック・ハイマンが弾くオルガン、
これが結構良い感じで印象的だ。

Ella Fitzgerald – Spring Can Really Hang You Up the Most

Once I was a sentimental thing
Threw my heart away each spring
Now a spring romance hasn’t got a chance…

Fran Landesman/Tommy Wolf – Spring Can Really Hang You Up the Most

春がやってくる度に
私は恋に夢中になって感傷的になっていたわ
でも今では春のロマンスなんてありえやしない…

6曲目は再びエラ・フィッツジェラルド、
1961年の『Clap Hands, Here Comes Charlie!』の中の1曲。

これもまた、
春らしからぬ感じ。

作詞のランデズマンはこの歌詞について、
T.S.エリオット1922年『The Waste Land(荒地)』の最初のフレーズのヒップな解釈と言っている。

April is the cruellest month, breeding
Lilacs out of the dead land, mixing
Memory and desire, stirring
Dull roots with spring rain…

T.S.Eliot – The Waste Land

4月は残酷極まる最たるもの
ライラックを死んだ土地から生み出して
記憶と欲望を混ぜ合わせ
春の雨で鈍重な草根をかき乱すのだ…

Sarah Vaughan – It Might as Well be Spring

The things I used to like
I don’t like anymore
I want a lot of other things
I’ve never had before
It’s just like mother says
I sit around and mope
Pretending I am wonderful
And knowing I’m a dope…

Oscar Hammerstein Ii/Richard Rodgers – It Might as Well be Spring

昔は好きだったのに
全然興味がないの
今まで手にしたことがないものを
やたらに欲しがってる
ママの言う通り
何も手がつかずふさぎこんでる
自分は素晴らしいと思い込んで
本当は馬鹿だと分かっているのに…

7曲目もサラ・ヴォーンが再登場、
1955年の『Sarah Vaughan In Hi-Fi』の中の1曲。

吹き込まれたのは1950年で、
耳に残るトランペットはマイルス・デイヴィスだね。

元々は1945年の映画『State Fair』の為の曲で、
ルアン・ホーガンが吹き替えで唄っている。

そして、
アカデミー歌曲賞を受賞している。

Blossom Dearie – A Fine Spring Morning

This is a fine spring morning
It’s everywhere for us to share…

Bob Haymes – A Fine Spring Morning

ステキな春の朝
私たちはどこでも分かち合える…

8曲目は、
再びブロッサム・ディアリー。

最初に出てきたアルバム、
『Blossom Dearie』のラスト・ナンバー。

ソング・ライターは、
ボブ・ヘイムズ。

俳優でもあり、
何本かの映画に出ている。

このアルバムに入っている何曲か、
『You For Me』や『Now At Last』もこの人の作品。

アラン・ブラントとの共作、
『That’s All』が有名なのかな。

Ella Fitzgerald – I Got the Spring Fever Blues

I feel so lazy, can’t do a thing
My mind is hazy just like a smoke ring…

Dave Bauer/Kay Werner/Sue Werner

何もやる気がしないし何もできない
私の心は煙の輪のように霞んでいる…

9曲目はエラ・フィッツジェラルド、
1936年にチック・ウェッブ&ヒズ・オーケストラのヴォーカルだった時のもの。

この時のエラ、
まだ18歳くらいだね。

なので声が若い感じだけど、
やはりあたりまえに上手い。

Nina Simone – Another Spring

Old people talk to themselves
When they sit all ‘round all day…

Angelo Badalamenti/John Clifford – Another Spring

老人は独り言を言うもの
どこでも一日中…

10曲目はニーナ・シモン、
1969年の『Nina Simone and Pian』の中の1曲。

激しいピアノのイントロに語るように始まる彼女の声、
圧巻のパフォーマンスだ。

老女の愚痴は、
やがて『♫And then one morning…』あたりから変化する。

そして最後は、
また語りに戻り『♫So I’m thankful for letting me see another spring』で終わる。

短いながらも、
曲の構成が素晴らしく聴き入ってしまう。

Eleonora D’Ettole Qartet feat. Renato Sellani – Joy Spring

11曲目はエレオノーラ・デットーレ・カルテット、
2014年の『Believe In Spring』からの1曲。

ピアノは、
レナート・セラーニ。

エレオノーラ・デットーレが唄う歌詞は、
ジョン・ヘンドリックスが付けた歌詞とは違う。

このアルバムには他にもさまざまな良い曲が並んでいるけど、
これが1番好きかな。

オリジナルはクリフォード・ブラウンの1954年の曲で、
アルバム『Clifford Brown & Max Roach』の中の1曲。

春の海辺で、
その後奥さんになるラルー・アンダーソンにプロポーズした時に吹いた曲と言われている。

タイトルの『Spring Joy』は、
確か彼女の愛称だったはず。

2年後の1956年、
彼は25歳の若さで交通事故で亡くなってしまう。

そう考えるとこの軽快な曲も、
少し違って聴こえたりする。

Blossom Dearie – Spring in Manhattan

Spring in Manhattan
Starts after dark
After a lazy afternoon
In Central Park…

A. Reach/T. Scibetta – Spring in Manhattan

マンハッタンの春は
暗くなってから始まる
セントラル・パークの
気怠い午後のあとに…

最後の12曲目は、
三度登場のブロッサム・ディアリー。

1976年のアルバム、
彼女の自主レーベル第三段『My New Celebrity Is You』の中の1曲。

途中から入ってくるロン・カーターのベース、
トゥーツ・シールマンスのハーモニカが実に良い感じだ。

というわけで…

どこにもないプレイリスト、
『Nowhere Playlist』のタイトルは『12 Best Songs with Spring in the Title』。

タイトルに『Spring』が付く、
女性ジャズ・ヴォーカル12曲と他のいくつかのヴァージョンをお届けしました。

毎年、
いろいろな春があるけど春はやってくる。

そしてその春が、
いつも素敵な春だとは限らない。

悲しく愚かな出来事は、
春夏秋冬いつもどこかで起こり続けている。

それでも、
春はやって来る。

ならば少しでも、
素敵な春でありますように。

まとめPlaylist

Another Nowhere Playlist

Nowhere Playlists
Nowhere PlaylistThe Best 〇〇 Songs About 〇〇


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