10 Anti-War Songs(vs 村上RADIO特別版)

anti-war-songs

村上RADIO特別版 戦争をやめさせるための音楽

村上春樹氏自身がDJを務めるTOKYO FMのラジオ番組、
ロシアのウクライナへの侵攻を受けて放送の『村上RADIO特別版 戦争をやめさせるための音楽』。

所有するレコードやCDから反戦や命の尊さを訴える作品を約10曲選んで、
背景となった社会情勢や自ら訳した歌詞と共に紹介するというもの。

どんな曲を選ぶのだろう?
メジャーなものを持ってくるのか?

それともあまり知られていない曲を並べるのか?
その間をとるのか?はわからない。

まあ、
楽しみではある。

こういった小さなことに楽しみを見出すことが、
日々それなりに愉快に過ごせる源になるのだ。

それでその前に、
こちらでも『Best 10 Anti-War songs』をつくってみようと思う。

これはこれで、
やはり小さな楽しみなのだ。

そんなことが楽しいのかって?
心の持ちようだね。

小市民は、
そんな風に過ごしていくのだ。

多分被る曲なんて殆どないような気もするけど、
何曲かかぶりそうな気もするしどうだろう?

まあ、
のちほど答え合わせをしてみよう。

Juliette Gréco – Le Déserteur

Monsieur le Président
Je ne veux pas la faire
Je ne suis pas sur terre
Pour tuer des pauvres gens
C’est pas pour vous fâcher
Il faut que je vous dise
Ma décision est prise
Je m’en vais déserter…

Boris Vian/Harold B. Berg – Le déserteur 

大統領閣下
私はやりたくなんかないのです
私は哀れな人々を殺すために
生まれてきたわけではないのです
怒らせるつもりはありませんが
あなたに申し上げねばなりません
覚悟を決めました
私は放棄します…

それで最初の曲は、
ボリス・ヴィアンが書いた『Le Déserteur』。

この曲は、
思いっきり真向から反戦を謳っている。

召集令状を受け取った男が大統領に送った、
兵役を拒否する手紙の形式で唄われている。

この曲がつくられたのは、
第一次インドシナ戦争下。

1946~1954年にベトナム共和国の独立を巡って、
フランスとの間で展開された戦争だ。

1954年のディエンビエンフーの戦いで敗北したフランスは、
ベトナム民主共和国と和平交渉を開始。

関係国の間でジュネーヴ協定が締結、
1956年にはフランス軍は完全撤収して80年に及ぶフランスのベトナム支配が終わった。

この曲は、
1954年にマルセル・ムルージが最初に吹き込んでいる。

ただレコーディングに際しては、
歌詞の内容が過激だったので一部書き換えられている。

元々と書き換えの最たるものは、
最後の部分。

最初は『Que je tiendrai une arme Et que je sais tirer』、
『私は武器をとって引き金を引くこともできる』だった。

それが『Que je n’aurai pas d’armes Et qu’ils pourront tirer』、
『私は武器を持っていないから発砲してもかまわない』になったのだ。

ここではオリジナルではなくて、
ジュリエット・グレコのヴァージョンで。

Nina Simone – Backlash Blues

Mr. Backlash, Mr. Backlash
Just who do think I am
You raise my taxes, freeze my wages
And send my son to Vietnam…

Langston Hughes/Nina Simone – Backlash Blues

バックラッシュさんバックラッシュさん
私を誰だと思っているの?
あなたは税金を上げて賃金を凍結した
そして息子をベトナムに送ったのよ…

ニーナ・シモン、
1967年のアルバム『Nina Simone Sings The Blues』の中の1曲。

反戦というよりも、
公民権運動の歌だね。

でも息子がベトナムに送られたことも唄っているから、
仲間に入れてあげてほしい。

二流の家に、
二流の学校しか与えられない。

全ての有色人種は二流で愚かなんですか?
と唄う彼女の声は彼女らしくやはり力強い。

彼女を初めて知ったのは、
1987年のことだ。

シャネルNo.5のCMで、
彼女の唄う『My Baby Just Cares For Me』流れていたのが始まり。

それから、
しばらく聴いていなかったけれど最近は良く聴くようになった。

年を重ねて、
この人の歌が今までよりも心に響くようになったからなのかもしれない。

Creedence Clearwarter Revival – Fortunate Son

Yeah, yeah
Some folks inherit star spangled eyes
Ooh, they send you down to war, Lord
And when you ask ‘em, “How much should we give?”
Ooh, they only answer “More! More! More!”, y’all…


John Fogerty – Fortunate Son

ああそうさ
一部の奴らは星を散りばめた目をそのまま受け継いで
オマエを戦地に送るんだ
どこまでやればいいんだい?ってオマエが訊いても
奴らの答えは決まってる
もっともっとまだまだだ…

クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル、
1969年のアルバム『Willy and the Poor Boys』の中の1曲。

シングル『Down on the Corner』のB面でもリリースされていて、
ちょうどAB面統合の集計に変わったBillboard Hot 100で3位になっている。

Rich men making war and poor men having to fight them、
金持ちが戦争をおっぱじめ貧乏人が彼らの為に戦う。

このべトナム戦争の頃、
アメリカは志願制ではなく徴兵制だった。

でもある種の人々は戦争の危険から逃れ、
ある種の人々はたとえ戦争に反対であっても戦わざるを得なかった。

いつだって、
どこでだって理不尽なことは起きている。

まあ、
そういうことだ。

The Rolling Stones – Gimme Shelter

War, children, it’s just a shot away
It’s just a shot away…

Jagger/Richards

なあ戦争なんて一発で始まっちまうんだぜ
たった一発の銃弾でおっぱじまるんだ…

ザ・ローリング・ストーンズ、
1969年のアルバム『Let It Bleed』の中の1曲。

アルバムでの表記は、
『Gimmie Shelter』。

20歳のゴスペル歌手メリー・クレイトンが、
体調を崩して参加できなくなったボニー・ブラムレットの代役で呼ばれて唄っている。

ギターは、
全てキースだ。

確かに戦争は、
あっけなく始まってしまうものなんだろう。

始めるのは、
きっと簡単なんだろう。

始めないことはある意味とてつもなく大変で、
終わらせることはもっと難しいのかもしれない。

The Cranberries – Zombie

But you see, it’s not me, it’s not my family.
In your head, in your head they are fighting,
With their tanks and their bombs,
And their bombs and their guns.
In your head, in your head, they are crying…

Dolores O’Riordan – Zombie

でもほらそれは私じゃないし私の家族でもない
あなたの頭の中で奴らは戦っている
戦車で爆弾で
爆弾で銃で
頭の中で頭の中でみんな泣いている…

クランベリーズ、
1994年の『No Need to Argue』の中の1曲。

1993年3月にIRAがウォリントン市内の繁華街のゴミ箱に仕掛けた爆弾で、
50人以上が負傷し3歳のジョナサン・ボールと12歳のティム・パリーが亡くなった。

曲の最初に出てくる『Child is slowly taken』は、
そのことを唄っている。

そして、
もう1つ『It’s the same old theme since nineteen-sixteen』という歌詞が出てくる。

これは、
1916年にアイルランドで起こったイースター蜂起のことだ。

イギリスからの支配を終わらせて、
アイルランド共和国を樹立する目的でアイルランド共和主義者たちが引き起こした反乱だ。

さまざまな理由で、
あちこちであれこれと争いが起きている。

それぞれの主張は、
それそれにとってみれば当然の主張なのかもしれない。

でも、
例えば亡くなった子供たちに主張はなかったはずだ。

なのに、
譲り合わない主張の中で命を絶たれてしまうわけで。

これもまた、
あまりにも理不尽だ。

The Doors – Unknown Soldier

Wait until the war is over
And we’re both a little older
The unknown soldier…

The Doors – Unknown Soldier

戦争が終わるまで待つんだ
俺たちはお互い少しずつ歳をとるのさ
無名戦士よ…

ザ・ドアーズ、
1968年の3枚目のアルバム『Waiting for the Sun』からの1曲。

このアルバムで、
初めて1位になったんだよね。

シングルでもリリースされて、
Billboard Hot 100で39位になっている。

まあ順位と、
評価は別のものだ。

1965年、
兵役を終えていたレイ・マンザレク以外にも徴集の知らせがきたらしい。

手を尽くして免れたらしいけれど、
もしも彼らがべトナムに行っていたらドアーズはなかっただろう。

でもきっと彼らの友達の何人かは、
ベトナムに行ったに違いない。

帰って来た者もいれば、
土に還ってしまった者だってきっといただろう。

いろいろなところに、
さまざまな分かれ道がある。

うまく正解の道を選び続けるて進むのは、
なかなか難しいことだ。

The Zombies – Butcher’s Tale (Western Front 1914)

And the preacher in his pulpit
Sermoned “Go and fight, do what is right”
But he don’t have to hear these guns
And I bet he sleeps at night…

Chris White – Butcher’s Tale (Wester

説教壇の牧師の説教は
行って戦いなさいやるべきことをやりなさい
でも彼には銃声は聴こえやしない
掛けてもいいけど彼はぐっすり眠っているはずだ…

ザ・ゾンビーズ、
1968年の『Odessey and Oracle』の中の1曲。

普通ならリード・シンガーのコリン・ブランストーンが唄うところだけど、
この曲はつくったクリス・ホワイトが唄っている。

サブ・タイトルは『Western Front 1914』だけど、
唄われている戦いは1916年のことみたいだ。

要は、
第一次世界大戦の西部戦線を舞台とした反戦歌だね。

いつでも嫌でも戦わなければならない人間と、
誰かに任せて戦わずして済ませている奴らがいる。

このような構図は、
何も戦争だけではない。

さまざまな場面で、
起こっていることだ。

そしてこういった構図は、
決してなくなることはないんだろう。

The Monkees – Last Train to Clarksville

Take the last train to Clarksville
And I’ll meet you at the station
You can be be there by four thirty
‘Cause I made your reservation
Don’t be slow, oh, no, no, no!
Oh, no, no, no!
And I don’t know if I’m ever coming home…

 Tommy Boyce/Bobby Hart – Last Train to Clarksville

クラークスヴィル行きの最終列車に乗って
駅で会おう
4時半に着くさ
予約は取ってある
遅れないでね
ああ嫌だ嫌だ嫌だ
帰ってこれるかどうかなんて分からないんだ…

ザ・モンキーズ、
1966年のデビュー・シングルで全米1位になった曲。

邦題は『恋の最終列車』、
まるで戦争なんて関係なさそうなある意味能天気なタイトルが付けられている。

でも、
クラークスヴィルの町の近くには空軍基地があった。

実際この曲がリリースされる前年、
この空軍基地から歩兵大隊を中心に多くのアメリカ兵がベトナム戦線へ派遣されている。

そうなると、
歌詞の『And I don’t know if I’m ever coming home』は一気に重いものになる。

まあ、
どこまでそういう意図で書かれたのか?はわからないけどね。

あと付けでいくらでも言えるし、
でもモンキーズのデビュー・シングルが反戦を匂わしている曲だとしたらそれはちょっとした事件だ。

ビートルズの『Paperback Writer』ってあるでしょ?
あれにインスパイアされた曲らしい。

フェードアウトしていくところが、
なぜか『take the last train』って聞こえたらしいけどどうも怪しい話だ。

The Kinks – Some Mother’s Son

Some mother’s son lies in a field
Someone has killed some mother’s son today
Head blown up by some soldier’s gun
While all the mothers stand and wait
Some mother’s son ain’t coming home today
Some mothers son ain’t got no grave…

Ray Davies – Some Mother’s Son

ある母親の息子が大地に横たわる
今日誰かが息子を殺したのだ
頭を兵士の銃に撃ち抜かれて
母親は皆息子の帰りを待ちわびる
でもある母の息子が家に戻ることはない
その息子には墓すらないのだ…

ザ・キンクス、
1969年の『Arthur (Or the Decline and Fall of the British Empire)』の中の1曲。

ある母親の息子は、
名前も顔もない兵士ではない。

親がいて名前があって、
さまざまな思い出がある1人の人間だ。

でも戦争では、
ある母親の息子は兵士の中の名もない1人になってしまうのだ。

それは、
単なる記号になってしまうということだ。

でもその兵士は、
単純に一人のどこかに暮らしていた市民のはずなのだ。

Pink Floyd – Goodby Blue Sky

Look Mummy
There’s an airplane up in the sky…

Roger Waters – Goodby Blue Sky

ママ見て
お空に飛行機が飛んでるよ…

ピンク・フロイド、
1979年のアルバム『The Wall』の中の1曲。

蒼空なのに、
爆撃を避ける為に屋内に居なくてはいけない理不尽さは子供にはわからない。

でもそのおかしいなと思う気持ちは、
とても素直なものだ。

そんな素直な気持ちすら、
戦争は圧し潰してしまう。

恐怖は残り、
その時の小さな傷は痛みを伴う記憶の扉になってしまう。

というわけで…

取り急ぎ、
思い付いたある意味『Anti-War Songs』を10曲お届けしました。

他にもいろいろあるはずだけど、
今回はこの10曲で。

そのうち足していったり差し換えたり、
順番を変えたりするかもしれないけれどね。

まとめPlaylist




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