グールドを聴くのにあきるとかける『ビング・クロスビーのホワイト・クリスマス』

ビング・クロスビー

村上作品にたまに出てくるホワイト・クリスマス

グレン・グールドを聴くのにあきると、
ときどきビング・クロスビーの『ホワイト・クリスマス』をかける。

―村上春樹-シドニーのグリーン・ストリート 5

ビング・クロスビーの『White Christmas』は、
村上春樹作品では何度か出てくる。

例えば、
コレ。

僕はプレーヤーをオート・リピートにして
ビング・クロスビーの「ホワイト・クリスマス」を二十六回聴いた。

―村上春樹-羊をめぐる冒険

あとは、
コレ。

「もう一曲唄って」と娘が催促した。
それで私は『ホワイト・クリスマス』を唄った。

―村上春樹-世界の終りとハードボイルドワンダーランド

そして、
コレ。

クラシック音楽の他に、
島本さんの家のレコード棚にはナット・キング・コールと
ビング・クロスビーのレコードが混じっていた。
僕らはその二枚のレコードも本当によく聴いた。
クロスビーの方はクリスマス音楽のレコードだったが、
僕らは季節には関係なくそれを聴いた。

―村上春樹-国境の南、太陽の西

他にもまだあったかもしれないが、
取り敢えずこのあたりはすぐに思い出せる。

さて、
グレン・グルードに飽きたらビング・クロスビーの『White Christmas』を聴く。

ボクの場合はまずこれはあり得ないけれど、
まあ好みだからね。

確かに、
季節に関係なくクリスマス・ソングを聴くことはたまにある。

ただその時に、
ビング・クロスビーの『White Christmas』を聴くことはまずない。

もし『White Christmas』なら、
オーティス・レディングのカバーを聴くことになる。

これだったら、
クリスマス関係なしに全然聴けちゃうのだ。

フリークエント・ウインド作戦

ビング・クロスビーだろうがオーティス・レディングだろうが、
いずれにしてもこの曲のタイトルを聴くとボクはいつも『フリークエント・ウインド作戦(Operation Frequent Wind)』のことを思い出してしまう。

この作戦はベトナム戦争末期1975年4月、
南ベトナムの首都サイゴン(現在のホーチミン市)陥落の前日にヘリコプターで在ベトナム米国人を脱出させたもの。

アメリカ大使館は避難に備えて『緊急時の民間人への標準的な指導とアドバイス』、
『Standard Instruction and Advice to Civilians in an Emergency』の略であるSAFEと呼ばれる15ページの小冊子を配布。

その中にはヘリコプターが迎えに行く場所の地図と、
以下の合図に関してだ。

Note evacuational signal. Do not disclose to other personnel.
When the evacuation is ordered, the code will be read out on Armed Forces Radio.
The code is: The temperature in Saigon is 105 degrees and rising.
This will be followed by the playing of I’m Dreaming of a White Christmas.

―SAFE

避難信号に注意してください。
他の人に開示しないでください。
避難が命じられると、コードは軍のラジオで読み上げられます。
コードは次のとおりです。サイゴンの温度は105度で上昇しています。
これに続いて、I’m Dreaming of a WhiteChristmasが演奏されます。

4月のラジオから季節外れの『White Christmas』が流れ、
作戦が始まった。

ただこの作戦は事前に漏れていたようだし、
南ベトナム側の現地の人たちもこのままでは国家が崩壊することを察知して米国大使館前に押し寄せなだれ込んでいた。

結局、
この脱出の合図は無意味なものになってしまった。

そんな話を知った後は、
この曲に対するイメージが変わってしまった。

以前そんな曲を2曲紹介したことがあったけど、
これもイメージがすっかり変わってしまった曲の1つではある。

曲とそのイメージを変えてしまうシーンやエピソードなどは、
そのギャップが激しければ激しいほど違うものに変わってしまうのだ。

サイゴンで集合の合図としてこの曲をラジオで聞いていた人たちは、
その時この曲がどんなふうに耳に入ってきたんだろう?

そして、
いったい今もまだ生きている人々はどんな気持ちで毎年のクリスマス・シーズンにこの曲を聴いているんだろう?

できることならば、
暖かい気持ちで聴けるようになっていると良いなと思う。

Bing Crosby – White Christmas

というわけで、
ビング・クロスビー1942年の『White Christmas』を。

この1942年のバージョンはオリジナル・マスター・テープは擦り切れてしまったので、
1947年に改めてオリジナルに近い形で再録音されている。

再現しようとしているから殆ど同じに聴こえるけど、
比較すると細かな違いに気付くはずだ。

なので、
1947年バージョンも一緒に聴いておこう。

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中国行きのスロウ・ボート
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