再びグレン・グールド登場
そんなわけで僕は毎日まいにちすごく暇である。
―村上春樹-シドニーのグリーン・ストリート 6
僕は爪を切ったり、
グレン・グールドのレコードを聴いたり、
時代物の自動拳銃の手入れをしたり、
ピザ・スタンドで「ちゃーりー」と世間話をしたりしながら時間をつぶしている。
そんなわけで、
『僕』は毎日まいにちすごく暇らしい。
羨ましい限り、
である。
潰す時間があるというのは、
とても良いなと思う。
時間を潰すのは時間の無駄だという考え方もあるかもしれないけれど、
それって贅沢で余裕があることなんだから全然悪くない。
そして、
再びグレン・グールドが登場する。
具体的な曲名は、
ここでもまた出てこない。
グレン・グールド晩年
グレン・グールドは、
1981年に『ゴルトベルク変奏曲』を再レコーディングした翌年に亡くなっている。
1982/9/27脳卒中でトロント総合病院に緊急入院した後に容態が急速に悪化、
10/4には延命措置停止を父が決断して亡くなってしまう。
亡くなる前の最後のレコーディングはリヒャルト・シュトラウス、
9/3の『ピアノ・ソナタ ロ短調 op.5』と『ピアノのための5つの小品 op.3』だ。
ただこれはピアノの最後の録音であって、
実際の彼の最後のレコーディングは指揮者としてだった。
それが、
ワーグナーの『ジークフリート牧歌』。
ワーグナーが、
妻への誕生日とクリスマスの贈り物として準備された曲だ。
グールド・ゴシップ
グールド自身はワーグナーとは違って生涯独身だったけど、
ドイツ系アメリカ人芸術家コルネリア・ブレンデル=フォスとの関係は知られている。
彼女はアメリカ人の作曲家で指揮者のルーカス・フォスと結婚していて子供も二人いたのに、
グールドの住むトロントに夫を残し子供を連れて行ってしまうんだよね。
トロントには4年半住んで結局二人の関係は終わるが、
それでもグールドは諦められず彼女が別れを説得するまで2年もかかったみたいだ。
それから10年後、
グールドはこの曲を最後にこの世を去ることになる。
その知らせを聴いた時、
彼女はいったい何を思っただろう?
Glenn Gould – Siegfried-Idyll
そんなわけで、
グレン・グールド最後のレコーディングのワーグナー『Siegfried-Idyll(ジークフリート牧歌)』。
トロント交響楽団のメンバーをプライヴェートに雇い録音したもので、
レコーディングは最後のピアノの録音1982/9/3から5日後の9/8。
グールドは、
『50歳になったら、ピアニストをやめて指揮者になろうと思う。ピアノはもう十分やったから』と言っていたらしい。
そして、
1982/9/25の50歳の誕生日の9日後の10/4に亡くなる。
ある意味、
言葉通り指揮者として亡くなったといえなくもない。
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