Santana – Soul Sacrifice

ディスコティック

オリジナルには出てこない『サンタナ』

ホールは心地良い暖かさに充ちて、
汗の匂いと、
誰かが焚いたらしい香の匂いが漂っていた。
フィリピン・バンドがサンタナのコピーをやっているようなディスコティックだった。

―村上春樹-中国行きのスロウ・ボート-Chapter3

これは、
『村上春樹 全作品 1979~1989』の方の一節だ。

もともとのオリジナルの方は、
サンタナのコピーをやっているフィリピン・バンドは登場しない。

これも、
筆者曰く『全集収録にあたって中盤以降にかなり手を入れた』一部分なのだろう。

この文章が加筆されたことで圧倒的に何かが変化したわけではないが、
当時の空気感みたいなものを少しは想像できるようにはなったかもしれない。

1973年のピンボールでも登場する『サンタナ』

サンタナのコピー・バンドは、
『1973年のピンボール』にも登場する。

土曜日には三人で近くのディスコティックに行き、
J&Bを飲みながらサンタナのコピー・バンドで踊った。

村上春樹-1973年のピンボールーChapter1

こちらのディスコティックは渋谷だから(それにしてもディスコティックってすごい言い方だな)、
新宿のディスコティックとは違う。

この頃って、
そんなにあちこちでサンタナのコピー・バンドが流行っていたのだろうか?

世代が違うからそのあたりのことはよくわからないんだけど、
きっとわかる人にはわかるサインみたいなものになっているのかもしれない。

同じ時代を共有した人間にしかわからないその時代独特の空気感、
これはその場に居た人間にしかやはりわからないのかもしれない。

もちろん、
想像くらいならできる。

でもそれは結局のところただの想像でしかなくて、
その時代に感じたものとは大きな隔たりがあるに違いない。

もちろんその時代に生きた人にしてもその時の空気感は美化されたりして、
何か違うものにすり替わっている可能性だってある。

それを留めておくためにも、
サンタナのコピー・バンドが加筆されなくてはいけなかったのかもしれない。

でもまあボクはサンタナは聴かないのだ

まあ、
そういうことだ。

ボクはサンタナを殆ど聴いたことがないし、
流していたこともない。

もしかすると聴かず嫌いなのかもしれないが、
何故かどうしても聴く気がしないのだ。

ウン、
スゴイバンドだってことは知っている。

ビル・グラハムの力が大きかったんだろうけど、
アルバムも出していないのにフィルモアのトリを務めている。

ウッドストックでも、
ゴールデン・タイムに出演予定だった(実際にはかなり出番が早くなったけど)。

確かにウッドストックの映像を観れば、
結構良いじゃんとは思う。

ウッドストックから2か月後にリリースされた1stアルバムは全米4位で100万枚も売れるし、
2ndは6週連続の1位を獲得。

その後もコンスタントにヒット・アルバムをちゃんと生み出し続けて現在に至るんだから、
そこにはそれなりのワケがあるはずだ。

でも、
ボクは聴かないのだ。

もちろんサンタナは殆ど聴いたことはないと言っても、
それは『殆ど』であって『1度も』というわけではない。

最初に聴いたのは、
横尾忠則氏がデザインしたジャケットだからという理由で手に取った1974年の『Lotus』。

その後は最高傑作と言われているらしい2nd、
1970年の『Abraxas(天の守護神)』。

それなりに聴いてはみたけれど、
何か合わなかったんだろうな。

こればかりは好みだから、
仕方がない。

あっ、
でも踊るには悪くないのかもしれない。

生バンドで演奏されていたら、
きっと踊り出したくもなるだろう。

ただ、
聴くのとはちょっと違うのだ。

もしかしたら、
今だったら聴けるのかもしれない。

Santana – Soul Sacrifice

というわけで、
ここでは曲名は特に出てこないので好きに選曲してみる。

選んだのは、
サンタナの1stアルバム『Santana』にも入っている『Soul Sacrifice』。

何となくこじんまりときれいにまとまっているアルバム・バージョンではなくて、
映像で良かった記憶のあるウッドストック・バージョンを聴いてみよう。

パーカッションとドラムがリズムを刻んでベースがそこに乗っかり、
カルロス・サンタナのギターとグレッグ・ローリーのオルガンによるリフで曲が始まる。

圧巻は何と言っても、
当時まだ19歳のマイケル・シュリーヴのドラム・ソロだ。

聴かず嫌いとは、
まさにこういうことを言うんだろう。

だからといって、
この先また聴くか?というとそれはまた別の問題だ。

なぜなら『Santana (Legacy Edition)』にはこの曲以外のウッドストックの演奏が何曲か入っているんだけれど、
何故かそれほど惹かれるものがなかったのだ。

別に否定しているわけではなくて、
好みだから仕方がないということだ。

ところで、
渋谷や新宿で演奏していたコピー・バンドのクォリティはどんな感じだったんだろう?

聴きながら、
ふとそんなことを思ったりした。

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