リッキー・ネルソンが「ハロー・メリー・ルウ」を唄った年だ。
十二の年に直子はこの土地にやってきた。
―村上春樹,1973年のピンボール
一九六一年、
西暦でいうとそういうことになる。
リッキー・ネルソンが「ハロー・メリー・ルウ」を唄った年だ。
1969年の春、
この時『僕』と『直子』は20歳。
直子は1961年12歳の時にやってきた自分の街について語り、
プラットフォームの端から端まで犬がいつも散歩してる駅のことを話す。
僕は、
その犬に会いたいと思う。
それから4年後の1973年の5月、
実際に『僕』は犬を見るために1人その駅を訪れる。
髭をそって半年振りにネクタイをしめて
新しいコードヴァンの靴をおろして。
Ricky Nelson – Hello Mary Lou
ここに出てくるリッキー・ネルソンの『Hello Mary Lou』は、
1961年のシングル。
Billboard Hot 100の1位になった、
ジェリー・フラーがサム・クックが唄うことを念頭に置いて書いた『Travelin’ Man』のB面。
ただB面とは言え、
この曲もBillboard Hot 100で9位になっている。
この曲の中でセンスの良いギター・ソロを弾いているのは、
ジェームズ・バートン。
Hello Mary Lou goodbye heart
―Gene Pitney, Cayet Mangiaracina – Hello Mary Lou
Sweet Mary Lou I’m so in love with you
I knew Mary Lou we’d never part
So hello Mary Lou goodbye heart…
ねえメリー・ルー 彼とはさよならしなよ
愛しのメリー・ルー ぼくは君に夢中なのさ
わかったんだよメリー・ルー ぼくらは一緒じゃなきゃってね
だからメリー・ルー 彼とはさよならしてよ…
好きになったから彼とは別れちまえよって、
まあ彼女がどう思っているかで随分と違ったものになる内容だな。
Johnny Duncan – Hello Mary Lou Goodbye Heart
リッキー・ネルソンのカバーが有名だしヒットしているんだけど、
この曲のオリジナルはジョニー・ダンカン。
1960年のシングルで、
B面はジョン・ディー・ラウダーミルク・ジュニアが書いた『Freddy And His Go-Cart』。
それで『Hello Mary Lou Goodbye Heart』のライターのクレジットは、
ジーン・ピットニーとなっている。
The Sparks – Merry, Merry Lou
でも実際はザ・スパークスが1957年に吹き込んだ、
『Merry, Merry Lou』が基というかそのまんまというか。
ただ、
この曲はB面。
A面はジェローム・カーンとオスカー・ハマースタイン2世が書いた、
“ケン” シソン1928年がオリジナルのカバー『Ol’ Man River』。
それで『Merry, Merry Lou』を書いたのは、
ザ・スパークスでピアノを演っていて後にドミニコ会神父となるケイエット・マンジアラシーナ。
なので、
今ではクレジットが『Written by Gene Pitney, Cayet Mangiaracina』になっている。
1961年
さて『リッキー・ネルソンが「ハロー・メリー・ルウ」を唄った年』の1961年は、
ジョン・F・ケネディのアメリカ合衆国第35代大統領に就任に始まる。
5月には人類初の有人衛星ソビエト連邦宇宙船ボストーク1号が、
ガガーリン飛行士を乗せて地球一周に成功した年でもある。
そして8月には、
東ドイツが東西ベルリンの境界を封鎖(後に境界線上にベルリンの壁を建設)した年でもある。
この3つの出来事を挙げるだけでも、
なかなかな1961年なのである。
Billboard Year-End Hot 100 singles of 1961
まあそれらは置いておいて、
ナゼこの年を『リッキー・ネルソンが「ハロー・メリー・ルウ」を唄った年』にしたんだろう?
例えばBillboard Year-End Hot 100(1962年1月6日に発表された1961年1-11月のベスト10)では、
この曲は49位。
他に、
いくらでももっとヒットした曲はあるわけで。
ちなみに、
1位から10位はこんな感じだ。
No.01 Bobby Lewis – Tossin’ and Turnin
No.02 Patsy Cline – I Fall to Pieces
No.03 The Highwaymen – Michael
No.04 Roy Orbison – Crying
No.05 Del Shannon – Runaway
No.06 The Jive Five – My True Story
No.07 Chubby Checker – Pony Time
No.08 The String-A-Longs – Wheels
No.09 Dee Clark – Raindrops
No.10 Joe Dowell – Wooden Heart
この年Billboard Year-End Hot 100に最多の4曲を送り込んだのは、
プレスリーだし。
No.39 Little Sister
No.51 Surrender
No.71 (Marie’s the Name) His Latest Flame
No.96 Are You Lonesome Tonight?No.05 Del Shannon – Runaway
チャビー・チェッカーは、
Best7を含む3曲を送り込んでいる。
No.07 Pony Time
No.70 The Fly
No.94 Let’s Twist Again
それでも『Hello Mary Lou』
リッキー・ネルソンも、
既に出てきている1枚のシングルA.B面で2曲送り込んではいるんだけど。
それでも、
上がかなりいるわけで。
でもまあこれらを並べて聴いたとしても、
印象に強く残るのは『Hello Mary Lou』ではある。
オリジナルではないし、
オリジナルも元ネタがある曲。
本当の彼女じゃあないし、
本当の彼女も本当の彼女ではない。
重ね合わせると、
そんな解釈もありだとは思うんだけど。
まあ、
謎だ。
リッキー・ネルソン
さて、
バンド・リーダーの父と女優の母を持ったリッキー・ネルソン。
1949年の10歳に満たない頃から、
既に両親と兄と一緒にラジオ番組『The Adventures of Ozzie and Harriet』に出演している。
1953年には、
映画『The Story of Three Loves』に11歳のトーマス役で出演して俳優としても活躍。
1957年17歳には、
レコード・デビュー。
最初のシングル両面、
『I’m Walkin / A Teenager’s Romance』でいきなり全米でそれぞれ4位と2位を獲得。
1958年には、
『Poor Little Fool』で全米1位になっている。
その後も浮き沈みはあったけど50年・60年代を経て、
1972年にも『Garden Party』で全米6位。
ただ、
残念ながら1985年にまだ45歳の時に飛行機事故で亡くなっている。
彼には双子の息子(兄マシュー・ネルソン / 弟ガナー・ネルソン)がいて、
ネルソンで活躍している。
よく考えたらリッキーの父オジーは『And Then Some』で全米1位になっているし、
ネルソンも『(Can’t Live Without Your) Love And Affection』で全米1位。
三代に渡って、
全米1位を獲得しているという意味ではスゴイ一家ではある。
リッキー・ネルソン – ハロー・メリー・ルウ 関連 Play List
01 リッキー・ネルソン – ハロー・メリー・ルウ
02 リッキー・ネルソン – トラベリン・マン
03 ジョニー・ダンカン – ハロー・メリー・ルウ
04 ジョニー・ダンカン – フレディ・アンド・ヒズ・ゴーカート
05 ザ・スパークス – メリー・メリー・ルー
06 ボビー・ルイス – トッシン・アンド・ターニング
07 パッツィー・クライン – アイ・フォール・トゥ・ピーセズ
08 ザ・ハイウェイメン – ミカエル
09 ロイ・オービソン – クライング
10 デル・シャノン – ランナウェイ
11 ザ・ジャイブ・ファイブ – マイ・トゥルー・ストーリー
12 チャビー・チェッカー – ポニー・タイム
13 ザ・ストリング・ア・ロングス – ホイールズ
14 ディー・クラーク – レインドロップス
15 ジョー・ダウェル – ウドゥン・ハート
16 エルヴィス・プレスリー – リトル・シスター
17 エルヴィス・プレスリー – サレンダー
18 エルヴィス・プレスリー – (マリーズ・ザ・ネイム・オブ)ヒズ・レイテスト・フレーム
19 エルヴィス・プレスリー – アー・ユー・ロンサム・トゥナイト
20 チャビー・チェッカー – ザ・フライ
21 チャビー・チェッカー – レッツ・ツイスト・アゲイン
22 リッキー・ネルソン – アイム・ウォーキン
23 リッキー・ネルソン – ア・ティーンエイジャーズ・ロマンス
24 リッキー・ネルソン – プア・リトル・フール
25 リッキー・ネルソン – ガーデン・パーティー
26 オジー・ネルソン – アンド・ゼン・サム
27 ネルソン – (キャント・リブ・ウィズアウト・ユア)ラブ・アンド・アフェクション
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