76曲目は4枚のレコード
村上春樹『古くて素敵なクラシック・レコードたち』で流れる音楽、
76曲目はリスト:交響詩「前奏曲」。
リストが1854年に作曲した曲で、
彼の13ある交響詩の中でも代表作と言えるだろう。
その年にリスト自身の指揮によって、
ワイマールで初演されている。
このタイトル、
なかなか面白い。
作曲者自身が正式名称として、
ラマルティーヌの詩による交響詩『レ・プレリュード』と記している。
アルフォンス・マリー・ルイ・ド・プラ・ド・ラマルティーヌ、
1820年の『Méditations poétiques(瞑想詩集)』。
そして、
リストによる標題の一部にこの詩の中の一節が出てくる。
私たちの人生は、
その厳粛な第一音が死によって奏でられる知られざる歌に対する一連の前奏曲そのものではないだろうか?と始まるやつだ。
実際に使われているフレーズは、
『警報のトランペットが鳴り響く』というところだけみたいだ。
われわれの人生は、
その厳粛なる第1音が
死によって奏でられる未知の歌への
一連の前奏曲(Lespréludes)でなくて
何であろうか?
愛はあらゆる存在の素晴らしい曙光である。
しかし、
荒々しい一吹きが
愛らしい幻影を吹き飛ばし、
激しい電光が祭壇を焼き尽くす
嵐の猛威によって
幸福の最初のときめきが
遮られないような運命が
果たしてあるだろうか?
そこには深く傷つけられた魂が
見出されるであろう。
そのような嵐のあとの、
田園生活のここちよい静けさのなかで、
過ぎ去った嵐を忘れ去ろうと
努めない者がいようか?
それにもかかわらず、
初めは
自然のふところに魅せられていた者も、
この慈悲深い平穏のなかに
長い間身を任せていることには、
堪えられなくなる。
そして、
「警報のトランペットが鳴り響く」と、
彼を戦列に就かせるべく召喚する
その戦争がどのようなものであれ、
戦いのなかで、
再び自己の意識を十分に見出し、
そして自己の持てる力を
完全に取り戻すために、
彼は危険な部署へ急ぎ赴く。
原曲は、
リストが1848年に作曲した曲。
ラマルティーヌの弟子、
オートランの詩に基づく男声合唱曲『Les quatre éléments(四大元素)のための序曲。
その曲を改訂して、
交響詩としたものだ。
なので、
ラマルティーヌの詩による交響詩というのはいわばあと付けみたいなものだ。
アーサー・フィドラー/ボストン・ポップス・オーケストラ
Arthur Fiedler,
Boston Pops Orchestra-
Franz Liszt:
Les préludes,
S.97
1967年
指揮:アーサー・フィドラー
演奏:ボストン・ポップス・オーケストラ
コンスタンティン・シルヴェストリ/フィルハーモニア管弦楽団
Constantin Silvestri,
Philharmonia Orchestra-
Franz Liszt:
Les préludes,
S.97
1958年
指揮:コンスタンティン・シルヴェストリ
演奏:フィルハーモニア管弦楽団
ポール・バレー/モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団
Paul Paray,
Monte Carlo National Opera Orchestra-
Franz Liszt:
Les préludes,
S.97
1970年
指揮:ポール・バレー
演奏:モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団
フェレンツ・フリッチャイ/ベルリン放送管弦楽団
Ferenc Fricsay,
Berlin Radio Orchestra-
Franz Liszt:
Les préludes,
S.97
1959年
指揮:フェレンツ・フリッチャイ
演奏:ベルリン放送管弦楽団
というわけで…
今回の村上春樹、
『古くて素敵なクラシック・レコードたち』で流れる音楽。
76曲目は、
リスト:交響詩「前奏曲」をお届けしました。
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