モーツァルト – 歌劇『魔笛』オレは鳥刺し

【ねじまき鳥クロニクル】の中のモーツァルト

ナツメグは微笑んだ。
「ねえ、
 それってなんだかモーツァルトの『魔笛』みたいな話じゃない。
 魔法の笛と、
 魔法の鐘で、
 遠くのお城に囚われたお姫さまを救い出す。
 私、
 あのオペラが大好きよ。
 何度も何度も見た。
 台詞もそっくり覚えている。
 『国中に知らぬものはなき鳥刺し男、
  パパゲーノとは俺のことだ』。
 見たことある?』

ねじまき鳥クロニクル

出て行った妻クミコを救い出したいとナツメグに話す僕、
それに対してナツメグは言う。

僕はある国の王子様、
タミーノなわけだね。

どちらがほんとうに正しい側なのか、
誰が囚われていて誰が囚われていないのか。

主人公たちは、
途中でわからなくなってしまう。

あなたには今のところ鳥刺し男もいないし魔法の笛も鐘もないと言われ、
でも井戸があると答える僕。

そのあなたのを手に入れることができればね、
でもものにはすべて値段があるのよと上等なハンカチをそっと広げるみたいに微笑んでナツメグは言う。

歌劇『魔笛』

この『魔笛』は、
既に【ダンス・ダンス・ダンス】の中で序曲が出てきている

ここでは『国中に知らぬものはなき鳥刺し男パパゲーノとは俺のことだ』だから、
第一幕第二場でパパゲーノが登場して歌うアリアDer Vogelfänger bin ich ja。

Der Vogelfänger bin ich ja,
stets lustig heissa hopsasa!
Ich Vogelfänger bin bekannt
Bei Alt und Jung im ganzen Land,
Weiss mit dem Locken umzugehn
Und mich aufs Pfeifen zu verstehn
D’rum kann ich froh und lustig sein,
denn alle Vögel sind ja mein…

Die Zauberflöte KV620

オレは鳥刺し
いつでも陽気さホイサッサ
国中の年寄りにも若者にも有名なのさ
もし鳥笛一つあったなら
山ほど小鳥をおびき寄せ
かごの中に閉じ込めりゃ
もう小鳥はみんなオレのもの…

鳥刺し男、
鳥刺しはもちろん鳥の刺身ではない。

鳥刺し男パパゲーノは、
鳥の捕獲を生業にしている。

鳥刺し男は野や森で鳥の巣から雛を盗み、
ある程度育てて売っていた人たち。

社会の周縁で貧困に近い生活をしていた鳥刺しは、
ある意味社会のはみ出し者。

王子タミーノと対極にあるパパゲーノ、
共にザラストロの与える試練にそれぞれのキャラで立ち向かっていく。

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ/カール・ベーム/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

この歌は、
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウのパパゲーノで。

演奏はカール・ベーム指揮、
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団。

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