スタン・ゲッツ – ジャンピング・ウィズ・シンフォニィ・シッド

スタン・ゲッツ - ジャンピング・ウィズ・シンフォニィ・シッド

「ジャンピング・ウィズ・シンフォニィ・シッド」のゲッツのソロをテープにあわせて全部口笛で吹いてしまうと気分はずっと良くなった。

カセット・テープで古いスタン・ゲッツを聴きながら昼間で働いた。
スタン・ゲッツ、
アル・ヘイグ、
ジミー・レイニー、
テディ・コティック、
タイニー・カーン、
最高のバンドだ。
「ジャンピング・ウィズ・シンフォニィ・シッド」のゲッツのソロをテープにあわせて全部口笛で吹いてしまうと気分はずっと良くなった。

―村上春樹,1973年のピンボール

僕は腰を下ろしたまま「ジャンピング・ウィズ・シンフォニー・シッド」のはじめの四小節を口笛で吹いてみた。

この曲は、
読み進めていくともう1度出てくる。

僕は腰を下ろしたまま
「ジャンピング・ウィズ・シンフォニー・シッド」のはじめの四小節を
口笛で吹いてみた。
スタン・ゲッツと
ヘッド・シェイキング・アンド・フット・タッピング・リズム・セクション……。
遮るものひとつないガランとした冷凍倉庫に、
口笛は素晴らしく綺麗に鳴り響いた。
僕は少し気を良くして次の四小節を吹いた。
そしてまた四小節。
あらゆるものが聴き耳を立てているような気がした。
もちろん誰も首を振らないし、
誰も足を踏みならさない。
それでも僕の口笛は倉庫の隅々に吸い込まれるように消えていった。

―村上春樹,1973年のピンボール

状況で聴こえ方は変わる

同じ曲だけど、
流れている状況はまるで違う。

病み上がりなのに仕事を片付けるため事務所にやってきた『僕』、
至急のゴム印が押された大量の英文の翻訳に取り組む場面。

元養鶏場の冷凍倉庫の中で、
他の77台のピンボール・マシーンと一緒に並んでいるスペースシップに再会する場面。

状況がまるで違うと、
音楽は全く別のものに聴こえたりする。

もしくは最初はミスマッチだと感じる場面で流れる音楽が、
インパクトが強すぎてもうその音楽がその場面にしか結びつかなくなってしまうことだってある。

例えばデヴィッド・リンチ監督の『Blue Velvet』で流れる、
ロイ・オービソンの『In Dreams』やケティ・レスターの『Love Letters』とかはその代表だ。

ながら労働・ながら勉強

さて、
音楽を聴きながら働くというのはなかなか良いものだ。

そうやって働ける時間がどこかであるとしたら、
それって悪くない。

音楽を聴きながら仕事をするっていうのは、
場合によっては効率が上がるものなのだ。

もちろん、
その逆だってある。

昔々、
ラジオを聴きながら勉強していたことがあった。

勉強だって、
場合によってはラジオを聴きながらの方が効率が上がることもあるのだ。

どちらにしても、
組み合わせの問題だ。

例えば歌詞のない音楽が効率を上げることもあるだろうし、
歌詞が邪魔して集中できないことだってあるかもしれない。

作業的な勉強だったら、
ラジオを聴きながらの方が却って息抜きになるかもしれない。

そう言う意味で、
やはり組み合わせっていうのはとても大事なことなのだ。

どううまく組み合わせるか?
自分をどう上手にマネジメントするのか?が結局は大事になってくるんだろう。

Junmping with Symphony Sid

その組み合わせという意味では、
この1951年10月28日ボストンのストーリーヴィルで吹き込まれたライブは見事な組み合わせだ。

The Stan Getz Quintette

ここに出てくる『Junmping with Symphony Sid』は、
6年後の1957年にリリースされた『At Storyville, Vol. 2』の収録曲。

このライブの4曲が収まった1952年リリースの『Jazz At Storyville』から5年を経て、
こちらは7曲収録。

1990年には更に2曲追加されて『At Storyville – Vol 1 & 2』が出て、
2002年にはには更に更に1曲追加されて『Jazz At Storyville』が出ている。

本文にも出てきていたように、
スタン・ゲッツのテナーサックスの脇を固めるのがギターのジミー・レイニー。

そしてアル・ヘイグのピアノに、
ベースのテディ・コティックとドラムのタイニー・カーン。

Lester Young and His Sextet

この曲のオリジナルは、
レスター・ヤング。

1947年、
78 RPMシングルでリリースされている。

ちなみにB面は、
やはりヤング自身の作品『No Eyes Blues』。

Stan’ s Blues

聴き比べればわかるけど、
ゲッツの方は『Stan’ s Blues』で始まっている。

この曲は、
何枚か収録アルバムがある。

例えば、
1965年リリースの『Getz/Gilberto #2』。

1964年、
カーネギー・ホールでのライヴ。

ゲイリー・バートンのヴィブラフォンに、
ジーン・チェリコのベースとジョー・ハントのドラムズ。

例えば、
1977年の『Live at Montmartre』。

同年、
コペンハーゲンのJazzhus Montmartreでのライヴ。

ジョアン・ブラッキーンのピアノ、
ニールス=ヘニング・エルステッド・ペダーセンのベースにビリー・ハートのドラムズ。

Covers of Junmping with Symphony Sid

この曲のカバーは、
結構いろいろある。

レスター・ヤングのオリジナルに歌詞を付けたキング・プレジャー、
これは聴いておきたい。

1952年のリリースのシングルで、
チャーリー・ファーガソンのテナー・サックスがフューチャーされている。

B面は、
ベン・キナードとライオネル・ハンプトンが書いた『Red Top』。

あとジョー・ジャクソン、
1988年の『Joe Jackson’s Jumpin’ Jive』に収録されているやつもなかなか良いのだ。

Symphony Sid

ところでこの曲のタイトルのシンフォニー・シドとは、
ジャズ・ ディスク・ジョッキーのシドニー・トーリンのこと。

Be-Bopを紹介して、
大衆に広めたのも彼だ。

この曲の他にも、
シドをタイトルにした曲が何曲もある。

例えば、
ルイ・ジョーダン1940年の『After School Swing Session (Swinging With Symphony Sid)』とか。

アーネット・コブ、
1947年の『Walkin’ With Sid』とか。

イリノイ・ジャケ、
1948年の『Symphony in Sid』とか。

要は、
なかなかな人なのだ。

The Stan Getz Quintette – Junmping with Symphony Sid 関連 Play List

01 ザ・スタン・ゲッツ・カルテット – ジャンピング・ウィズ・シンフォニィ・シッド
02 レスター・ヤング&ヒズ・セクステット – ジャンピング・ウィズ・シンフォニィ・シッド
03 レスター・ヤング&ヒズ・セクステット – ノー・アイズ・ブルース
04 スタン・ゲッツ – スタンズ・ブルース(From Getz/Gilberto #2)
05 スタン・ゲッツ – スタンズ・ブルース(From Live at Montmartre)
06 キング・プレジャー – ジャンピング・ウィズ・シンフォニィ・シッド
07 キング・プレジャー – レッド・トップ
08 ジョー・ジャクソン – Jジャンピング・ウィズ・シンフォニィ・シッド
09 ルイス・ジョーダン – アフター・スクール・スィング・セッション
10 アーネット・コブ – ウォーキン・ウィズ・シッド
11 イリノイ・ジャケ & ヒズ・オーケストラ – シンフォニー・イン・シッド

【1973年のピンボール】で流れる他の音たちはこちら!

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