間違えてレコードを購入してしまった『ブラームス』と『マーラー』

レコード

あり得ない話はゴロゴロ転がっている

――僕は個人的にはあなたの苦情に対して
――ブラームスとマーラーを間違えて買ってしまったという苦情に対して
――心から同情しています。これは嘘ではありません。

―村上春樹-カンガルー通信

果たしてブラームスとマーラーを間違えて、
レコードを購入してしまうなんてことがあるんだろうか?

まあ普通なら考えられないけど、
世の中では考えられないことなんてたくさん起こるものなのだ。

あり得ない話なんていうのはゴロゴロ転がっているもので、
あり得ないなんてものはそもそもないのだ。

そして創作された物語なら猶更で、
そこでは何でもありなのだ。

それにしてもこの間違えてしまった人は、
そもそもどんな曲が入ったレコードを買いたかったのだろうか?

だいたいブラームスを買いたかったのに、
マーラーを買ってしまったのか?

そもそもマーラーを買いたかったのに、
ブラームスを買ってしまったのか?

いずれにしても、
間違えたとはいえ1週間も経ってからレシートなしにレコードを交換してほしいというのは全くあり得ない。

そんなことは、
小学生だってわかる。

ブラームスとマーラーのレコードを間違えて買ってしまったのは、
どう考えても本人が悪いわけで。

同情に値するのか?は何とも言えないけど、
間違えたことを諦めて聴いてしまえばその間違えはあながち悪くはなかったかもなと思うかもしれない。

間違いはある

実はこんなことを言っているが、
ボクも1度だけ間違えてレコードを買ったことがある。

小学生の頃にラジオで聞いたカーペンターズの『Yesterday Once More』のシングルが欲しくて、
路面のワゴンで中古レコードを売っているところで間違えたことがあるのだ。

何しろタイトルも知らないまま、
英語もまだわからないままだったから何となくで選んでしまったのだ。

案の定、
それは『Yesterday Once More』ではなかった。

それは『Rainy Days And Mondays』だった。

でも、
その間違いは決して失敗だったわけじゃあない。

それはそれで、
良かったのだ。

ブラームス?マーラー?どっち?

さて、
ここでは音楽が鳴っているわけではない。

間違えて購入したものがレコードで、
そこにマーラーとブラームスが出てくるだけのことだ。

でもせっかく出てきたのだから何か聴きいておきたい。

そうすれば、
しばらく聴いていなかった曲や聴いたことがなかった曲を聴くことができる。

そうすれば、
日頃の偏った聴き方は少しは緩やかになる。

そうじゃないと、
同じものばかりを聴くことになる。

それはそれで良いんだけれど、
世の中には音楽が溢れかえっているわけで。

どうせなら、
あれも聴きたいこれも聴きたいもっともっと聴きたいということだ。

マーラー – 交響曲第1番ニ長調

ボクがこの物語を読んだ時に思ったのは交響曲第1番違いだったのかな?
ということだった。

何故そう思ったのか?はわからないけれど、
確かにそう思ったのだ。

というわけで、
マーラーとブラームスの交響曲第1番を聴いていこう。

最初は、
マーラーの交響曲第1番ニ長調『巨人』。

1889年の初演では『交響詩』だったけど、
その後マーラーらしく数々の改訂がされて最終稿に⾄るまで10年ほどかかっている。

副題の『巨人』は1893年交響詩の上演で付けられたもので、
後にマーラー自身が削除している。

この『巨人』はマーラーの愛読書、
ジャン・パウルの小説『巨人(Titan)』に由来するものだ。

というわけでマーラーの交響曲 第1番 ニ長調『巨人』の第1楽章を、
レナード・バーンスタイン指揮/ニューヨーク・フィルハーモニック1966年の演奏で聴こう。

ブラームス – 交響曲第1番ハ短調

続いては、
ブラームスの交響曲第1番ハ短調。

着想から完成までに21年もかかったと言われているもので、
その背景にはベートーヴェンの交響曲に比肩しうるものでなければならないと考えていたがあったからのようだ。

結果的には『ベートーヴェンに10番目の交響曲ができたようだ』という評価も得られるほどの、
素晴らしい出来栄えになっている。

というわけでブラームスの交響曲第1番ハ短調の第4楽章を、
カール・ベーム指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団で聴こう。

どちらをどちらに間違えて買っても、
やはりこれは失敗ではないし損はしないと思うんだけどな。

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