Dave Brubeck Quartet – Just One of Those Things

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街とその不確かな壁

2023年4月13日、
新潮社から村上春樹の書下ろし長編『街とその不確かな壁』が出た。

巻末の発行年月日は、
2023年4月10日なんだけどこの違いは一体なんだろう?ということはちょっと置いておこう。

ここは、
あくまでも音楽が流れる場所だ。

コール・ポーターの古いスタンダード曲

天井近くにセットされた小型のスピーカーからは、
デイヴ・ブルーベック・カルテットの演奏する、
コール・ポーターの古いスタンダード曲が小さな音で流れていた。
清らかな水流を思わせるポール・デズモンドのアルトサックス・ソロ。

街とその不確かな壁 P365

珍しくあとがきがあるこの作品だが、
本編は655ページで終わる。

そして音楽が流れてくるのは、
半分以上過ぎた365ページなのだ。

それが、
デイヴ・ブルーベック・カルテットの演奏するコール・ポーターの古いスタンダード曲。

ここではよく知っているはずの曲なのに、
タイトルがどうしても思い出せなかったと曲名は出てこない。

ただ、
数ページ読み進めるとその曲のタイトルが出てくる。

そうするうちに出し抜けに
―まるで足元の茂みから鳥が飛び立つみたいに唐突に―
その題名を思い出した。
駅近くのコーヒーショップでかかっていた、
コール・ポーターのスタンダード曲の題名を。
『Just One of Those Things(よくあることだけど)』だ。

街とその不確かな壁 P368

Just One of Those Things

この『Just One of Those Things』という曲は、
その通りCole Porter(コール・ポーター)の作品。

元々は1935年のミュージカル、
『Jubilee(ジュビリー)』の為に書かれた曲。

June Knight(ジューン・ナイト)と、
Charles Walters(チャールス・ウォルタース)が舞台で歌っている。

なので、
歌詞がちゃんとある。

もちろん、
作詞もコール・ポーター。

It was just one of those things
Just one of those crazy flings
One of those bells that now and then rings
Just one of those things

So good-bye, dear, and amen
Here’s hoping we meet now and then
It was great fun
But it was just one of those things

Just One of Those Things

***********

それはよくあること
激しい衝動みたいなもの
鳴り響く鐘のようなもの
そんなのよくある話

それでじゃあさようなら
またいつかここで逢えますように
とっても楽しかった
でもまあよくあることだけど

************

世間的にはよくあることでも、
もしもそれが自分に降りかかったらどうなるんだろう?

よくあることさなんて他人事のように言っていたことが嘘のように、
よくあることでは済まされなくなったりするものだ。

そうであっても、
よくあることと自分に言い聞かせてやり過ごさなければならない物事や時はある。

1st Recording Richard Himber – Just One of Those Things

それでこの曲の1stレコーディングは、
Richard Himber(リチャード・ヒンバー)。

My Favorites

その後、
多くのミュージシャンが吹き込んでいる。

ボクが好きなのは、
沢山あるけどいくつか選んでよう。

Billie Holiday – Just One of Those Things

先ずは、
やはりBillie Holiday(ビリー・ホリデイ)。

1957年に吹き込まれ、
1958年にリリースされたアルバム『Songs for Distingué Lovers』に入っている。

Blossom Dearie – Just One of Those Things

続いては、
Blossom Dearie(ブロッサム・ディアリー)。

やはり1957年に吹き込まれ、
1958年にリリースされたアルバム『Give Him the Ooh-La-La』の最初の曲。

Ella Fitzgerald – Just One of Those Things

そして、
Ella Fitzgerald(エラ・フィッツジェラルド)。

1956年に吹き込まれて、
同じ1956年にリリースされた『Ella Fitzgerald Sings the Cole Porter Song Book』の収録曲。

Dave Brubeck Quartet – Just One of Those Things

さて、
『街とその不確かな壁』の中で流れるのはデイヴ・ブルーベック・カルテットのヴァージョン。

1952年に吹き込まれて、
同年にリリースされたアルバム『Dave Brubeck Quartet』の中の1曲。

【街とその不確かな壁】で流れる他の音たちはこちら!

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