『ライト・マイ・ファイア』と『ロング・アンド・ワインディング・ロード』の時代

3年の開きがあるLight My FireとThe Long And Winding Road

ジム・モリソンが「ライト・マイ・ファイア」を唄ったり、ポール・マッカートニーが「ロング・アンド・ワインディング・ロード」を唄っていたりした時代――少し前後するような気もするけれど、まあそんな時代だ――がそれほど昔のことだなんて、僕にはどうもうまく実感できないのだ。

―村上春樹-午後の最後の芝生

ジム・モリソンが『Light My Fire』を唄ったのは、
1966年のことだ。

翌年にリリースされた1stアルバム『Doors』に入っていて、
シングル・カットされ全米1位になっている。

ポール・マッカートニーが『The Long And Winding Road』を唄ったのは、
その3年後の1969年。

翌年の70年台に入ってからリリースされたアルバム『Let It Be』に収録、
こちらもシングル・カットされてやはり全米1位になっている。

ここに書かれているような『少し前後するような気がする』レベルではなく、
明らかに3年という月日の隔たりがある。

それがとても長い時間なのか?
はたまた60年代後半と1つにまとめてしまっても良いくらいの時間なのか?はわからない。

それこそ人によって違うし、
その時の年齢によっても違うだろう。

The Doors – Light My Fire

さて、
先ずは『Light My Fire』。

この曲の邦題は、
『ハートに火をつけて』だ。

このタイトルについて、
別のところでこんなふうに書いている。

「ハートに火をつけて」という 日本語のタイトルは いささかやわにすぎると僕は思った。
それはどうしたって ”Light My Fire”であって、それ以外の何物でもないのだ。__

__上品に「僕のハートに火をつけ」たり「夜じゅう燃え上がる」のではなく、
もっとそれはフィジカルであり肉体的なのだ。
彼は夜そのものに、
あるいは肉体そのものに火をつけようとしているのだ。

―村上春樹-ジム・モリソンのための「ソウル・キッチン」

いささかやわにすぎるか…、
確かにジム・モリスンの歌声は『ハートに火をつけて』ねという感じじゃあない。

ただこの曲って、
案外ポップでキャッチーだからカバーはしやすいのだろう。

多くの人がこの曲を取り上げているんだけれど、
オリジナルに少しでも迫ったものなどどこにもない。

まあ迫る気なんて最初からないのかもしれないけれど、
あまりに違い過ぎて聴いたことを後悔するくらいだ。

作者も書いている通り、
例えばホセ・フェリシアーノやスティービー・ワンダーがこの曲を演ってもせいぜい誰かのハートに火をつけることができるくらいだろう。

でも肉体そのものにじかに火をつけたり、
スピーカーの向こうから肉の焦げる臭いを漂わせたりなんてことはジム・モリスン以外にはやはりできやしないのだ。

ミック・ジャガーだってそんなことは無理かどうかは別として、
この意見には概ね賛成だ。

The Beatles – The Long And Winding Road

さて、
『The Long And Winding Road』だ。

昔はわざわざ聴いたこともあるけど、
今では全く聴かない。

なにしろ小学生の頃から聴いていたから、
もしかすると既に生涯再生回数を上回ったのかもしれない。

それが何回なのか?
は曲によって違うだろうけどこの曲に関してはそんな感じだ。

1990年にポールがビートルズで来日して以来初めてソロでついに日本に来た時、
ドームでこの曲を演奏するのを生で見た時はさすがに感動した。

ウイングスの公演が中止になってからも10年も経っていたわけで、
それは感動するに決まっている。

もう、
30年以上昔の話だ。

この曲は先日亡くなったフィル・スペクターがオーケストラと合唱をオーバー・ダビングしたバージョンをずっと聴いていたから、
それがスタンダードになっている。

その後『The Beatles’ Anthology 3』でオーバー・ダビングを消したものを聴き、
更に当初のコンセプトに近い『Let It Be… Naked』のバージョンも聴いてきた。

久しぶりにいくつかのバージョンを聴いてみたけれど、
結局小学生の頃から聴き慣れたオーバー・ダビングのバージョンが1番しっくりときた。

まあ、
そうなるよな。

いずれにしても…

どちらの曲も、
リアルタイムで聴いたわけではない。

その時代だからこそ生まれた曲なのかもしれないしその空気感は想像止まりにしかならないけど、
それでも随分早い段階でこれらの曲を聴くことができたのは今でも良かっと思っている。

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