スピーカーからウェイン・ニュートンの古いメロディが流れ出す
「音楽がないと寂しいね。」
―村上春樹,1973年のピンボール
ジェイはそう言ってジューク・ボックスの鍵を鼠に投げた。
鼠は五曲選んでカウンターに戻り、
ビールのつづきを飲んだ。
スピーカーからウェイン・ニュートンの古いメロディが流れ出す。
ジェイズ・バーのジューク・ボックスには、
どんな曲が入っているのか?ふと気になった。
これまで、
このジューク・ボックスから流れた曲を思い出してみよう。
『風の歌を聴け』では、
ジョニー・アリディがないことが出てくる。
フランス人の水兵が、
何故ジューク・ボックスにジョニー・アリディのレコードが無いのかと僕に訊ねたシーンがあった。
僕の答えは、
人気がないから。
僕と鼠がピンボールを6回続けて、
僕が奇跡的に2勝したあとカウンターに戻りぼんやりと聴いていたレコードが出てくる。
1968年スライ&ザ・ファミリー・ストーンの『Everyday People』、
1969年クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングの『Woodstock』。
1969年ノーマン・グリーンバウムの『Spirit In The Sky』、
1969年エディ・ホールマン『Hey There Lonely Girl』。
どれも、
それなりにヒットした曲だ。
もっと出てきていたような気がしたけど、
多分これだけだ。
Wayne Newton
そして、
今回昔の古いものも入っていることがわかる。
Danke Schoen
もちろんウェイン・ニュートンは、
今でもその時も活動しているけど『古いメロディ』という以上は60年代なんだろう。
60年代にニュートンの最もヒットした曲は、
1963年のBillboard Hot 100で13位になった『Danke Schoen』。
そんなわけで具体的な曲名は出てこないけど、
やはり流れたのは『Danke Schoen』あたりだろう。
ソロというか、
Wayne Newton And The Newton Brothers名義だけど。
ちなみにB面は、
アーティ・ウェインとベン・ローリーが書いた『Better Now Than Later』。
結局1960年代だけでも100位以内にチャート・インした曲は、
全部で16曲もある。
その後もずっと活躍していて、
ラスベガスでは3万回以上ものソロ・ショーを行っている。
1st release
この曲、
元々はベルト・ケンプフェルトが書いたインストメンタル。
1962年にベルト・ケンプフェルト楽団が吹き込んで、
翌年の1963年にリリースしたものが最初で『Living It Up!』の収録曲。
それにクルト・シュヴァーバッハがドイツ語の歌詞を書いて、
ミルト・ゲイブラーが英語の訳詞をつけたもの。
最初はボビー・ダーリンがリリースするはずだったけれど、
彼がニュートンのパフォーマンスを見て譲ったという話だ。
Danke schoen, darling, danke schoen
―Bert Kaempfert, Milt Gabler, Kurt Schwabach,Danke Schoen
Thank you for seeing me again
Though we go on our separate ways
Still the memory stays for always
My heart says“Danke Schoen”…
ありがとう 愛しのキミ ありがとう
もう1度会ってくれてありがとう
お互い違う道を歩むけれど
それでも思い出はいつもここにあるんだ
そのボクの心がありがとうって言っているのさ…
別れてしまった恋人に、
その思い出に感謝するという内容だ。
鼠もヴィオラの彼女に、
感謝していたんだろうか?
Ferris Bueller’s Day Off
1986年ジョン・ヒューズ監督の映画『Ferris Bueller’s Day Off(フェリスはある朝突然に)』で、
この曲が流れるシーンがある。
マシュー・ブロデリックが演じる高校生フェリスが、
パレードの最中にこの曲とビートルズの『Twist and Shout』を口パクで唄うシーン。
これが、
意外に楽しくて印象に残っている。
Wayne Newton 関連 Play List
01 Wayne Newton – Danke Schoen
02 Wayne Newton – Better Now Than Later
03 Bert Kaempfert And His Orchestra – Danke Schoen
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