ビートルズ ラバー・ソウル

The Beatles - Rubber Soul

ビートルズの「ラバー・ソウル」だった。

一人が席を立ってレコードをかけた。
ビートルズの「ラバー・ソウル」だった。
「こんなレコード買った覚えないぜ。」
僕は驚いて叫んだ。
「私たちが買ったの。」
「もらったお金を少しずつ貯めたのよ。」
僕は首を振った。
「ビートルズは嫌い?」
僕は黙っていた。

―村上春樹,1973年のピンボール

双子が、
もらったお金を少しずつ貯めて買った『ラバー・ソウル』。

ビートルズの数あるアルバムの中から、
これを選ぶとはなかなかセンスが良い2人だ。

でも『僕』はそのアルバムがかかると、
驚いて叫んで首を振って黙っていた。

ナゼ、
僕は黙っていたんだろう?

昔のガール・フレンドにバレンタイン・デーにもらったレコード、
ヘンデルの『レコーダー・ソナタ』は平気だったのにだ。

まあ過去には、
二種類ある。

何の痛みも伴わない平和で懐かしい過去と、
いつまで経っても傷が抉られるような生々しい過去だ。

これは、
当たり前だけど全く違う。

そう言う意味で、
ラバー・ソウルは僕にとって冷静ではいられない過去が蘇るでレコードだったのかもしれない。

オープニング・トラックは、
ジョージが当時聴いていたオーティス・レディングの『Respect』に影響された『Drive My Car』。

次に流れてくるのは、
あの『Norwegian Wood』。

ドイツのハンブルク空港に着陸したボーイング747機の機内、
流れているのは『Norwegian Wood』。

それはビートルズのそれではなくて、
どこかのオーケストラが甘く演奏するもの。

そしてそれは、
いつものように(この時はいつも以上に)『僕』を混乱させる。

この曲を好きだったのは、
直子だ。

そりゃあ、
黙るに違いない。

なにしろ、
村上作品の多くの主人公は直子を引き摺っているのだからね。

そしてレコードは止められ、
沈黙。

もう一度聴こうと、
気を取り直す僕。

結局、
両面を聴きながらコーヒーを飲む3人。

幾らか安らかになる僕、
嬉しそうな双子。

それで良いのだ、
何たってラバー・ソウルなんだから。

The Beatles – Rubber Soul

このアルバムはビートルズ1965年、
6作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム。

1965年にリリースされたアルバムを、
アレコレ聴いてみればわかるけどこれは別格なのだ。

奇跡、
と言っても良いかもしれない。

あれこれと語る必要はない、
それでもう充分だ。

Otis Redding – Respect

ちなみに『Drive My Car』に影響を与えたという、
オーティス・レディングの『Respect』。

1965年にシングルでリリースされ、
アルバム『Otis Blue / Otis Redding Sings Soul』に収録されている。

B面は『Ole Man Trouble』で、
どちらも自身の曲。

このシングルは、
Billboard Hot 100では47位が最高位。

これをカバーしてBillboard Hot 100で1位を獲得したのが、
1967年のアレサ・フランクリンのバージョン。

1967年のアルバム、
『I Never Loved a Man the Way I Love You』に収録されている。

シングルのB面は、
自身と当時の夫テッド・ホワイトが書いた『Dr. Feelgood』。

Rubber Soul Cover Songs

このアルバムの曲は、
他の曲もそうだけど当然カバーされたものがたくさんある。

それぞれ1曲づつ、
選んでいってみるとこんな感じ。

Baptiste Trotignon – Drive My Car

バティスト・トロティニョンのリーダー・アルバム、
2023年『Brexit Music』の収録曲。

ベースはマット・ペンマン、
ドラムズはグレッグ・ハッチンソン。

これが、
なかなかカッコいいのだ。

このアルバムでは他にもポリスやツェッペリンやストーンズなんかも演っているんだけど、
非常にセンスのあるアレンジになっている。

Lisa Bassenge – Norwegian Wood (This Bird Has Flown)

リサ・バッセンジ、
2018年のアルバム『Borrowed And Blue』の収録曲。

いきなり、
アンドレアス・ラングのベースが1分近く続く。

初めて知らないで聴いたら、
いったい何の曲なのかきっとわからないだろう。

もちろん、
リサ・バッセンジが唄い出せばすぐにそれとわかるけれど。

やがてヤコブ・カールソンのピアノが絡んでくると、
また何の曲かわからなくなる。

ボーカル・トラックを外してしまったら、
多分この曲が『Norwegian Wood (This Bird Has Flown)』とはわからないに違いない。

そこがなかなか面白いし、
よってすぐにそれとわかる他のカバーとは一線を画している。

You Won’t See Me

まだロキシー・ミュージックのリード・ボーカリストだったブライアン・フェリー、
1973年のアルバム『These Foolish Things』の収録曲。

電話の話し中の音?で始まって、
いきなり不安定な音程とピッチが微妙にズレているような彼の歌が始まる。

それにしても、
この人の独特の唄い方はクセになる。

といっても、
アレコレ聴くことは殆どないけど。

Marky Ramone and the Intruders – Nowhere Man

トミー・ラモーンのあとラモーンズのドラマーになった、
マーキー・ラモーンがラモーンズ後に結成したバンドがトミー・ラモーン・アンド。

2枚しかアルバムは出さなかったけれど、
2枚目1999年の『The Answer to Your Problems? (Don’t Blame Me! in South America)』収録曲。

いかにものサウンドが、
いかにも気持ち良い。

Admirals – Think For Yourself

2015年にリリースされた、
丸々『Rubber Soul』をカバーしたアルバムがある。

インディー・ロック・アーティストが各曲をカバーしているもので、
タイトルは『Looking Through You: A 50th Anniversary Tribute to the Beatles’ Rubber Soul』。

この中に収録されている、
アドミラルズというバンドのカバー。

アレンジが、
なかなか良くて何度も聴いてしまう。

Bettye LaVette – The Word

16歳で初めてレコードを出したベティ・ラヴェット、
2010年の『Interpretations: The British Rock Songbook』収録曲。

タイトル通り、
ブリティッシュ・ロックのカバー・アルバム。

ザ・フーやピンク・フロイド、
ストーンズやツェッペリンなどのカバーが並ぶところが楽しい。

この人のソウルフルな声がこの曲を別のものに変えていて、
オリジナルのように聴こえる。

Iggy Pop – Michelle

イギーポップ、
2011年のアルバム『Après』の収録曲。

吹き込んだのは2010年だけど、
ヴァージン EMI レコードによって拒否されて2012 年サウザンド・マイル・インクからリリース。

ジャケットの写真はソフィー・ブロンディ監督のフランス映画『L’Étoile du jour』で、
彼が演じたラ・コンサイエンスだね。

ポールとは全く違う声で流れてくるボーカルは、
ちょっとゾクゾクする。

Nitty Gritty Dirt Band – What Goes on

ニッティー・グリッティー・ダート・バンド、
1970年『Uncle Charlie & His Dog Teddy』の収録曲。

カントリー調のきょくだからね、
こういうバンドが演るとハマる。

この曲は、
リンゴ・スターがビートルズの楽曲で初めて作曲と作詞に参加した楽曲と言われている。

クレジットは確かにLennon–McCartney–Starkey、
唯一の楽曲だ。

DJ Style feat. KSS – Girl

アルゼンチン・タンゴ風にアレンジしたカバー・アルバム、
2012年『Tango & Beatles – The Electrotango Songbook Of The Fab Four』の収録曲。

カントリー調のあとは、
タンゴ風で。

ブエノスアイレスのエレクトロニック・タンゴ、
たまにはこういうのもありかもしれない。

それにしても、
ビートルズのカバー・アルバムって本当にいろいろある。

Lisa Lauren – I’m Looking Through You

リサ・ローレン、
2004年『It Is What It Is』の収録曲。

2年後、
ビートルズのカバー・アルバム『Lisa Lauren Loves The Beatles』にも入っている。

グレッグ・コックのギター、
そしてジェフトーマスのドラムズとパーカッションがこのカバ―を更に良いものにしている。

もちろんバックがいくら良くても、
このリサの歌声あってのものだけど。

Diana Krall – In My Life

ダイアナ・クラーク、
2015年『Wallflower』の収録曲でデラックス盤ボーナス・トラック。

カーペンターズやイーグルス、
エルトン・ジョンに10CCなどのカバーで構成されているアルバムだ。

この人のカバーがあると、
ついつい選んでしまうのは自覚していないんだけどやはり好きなんだろう。

Ben Kweller and Albert Hammond Jr. – Wait

2005年、
ラバー・ソウル丸ごとのカバー・アルバム『This Bird Has Flown – 40th Anniversary Tribute to Rubber Soul』の収録曲。

ベン・クウェラーとアルバート・ハモンド・ジュニアのカバーは、
オリジナルに近いところもあるけれどまた違う魅力がある。

Nellie McKay – If I Needed Someone

全曲と同じ、
『This Bird Has Flown – 40th Anniversary Tribute to Rubber Soul』の収録曲。

ネリー・マッカイのカバーは、
アレンジが見事だ。

カバーは、
こうあるべきだという1つの形だ。

Nancy Sinatra – Run For Your Life

ナンシー・シナトラ、
1966年『Boots』の収録曲。

この1stアルバムでは、
ストーンズの曲もカバーしている。

ビリー・ストレンジのアレンジとリー・ヘイズルウッドのプロデュースが、
彼女の魅力をかなりアップさせていることは間違いない。

The Beatles – Rubber Soul 関連 Play List

01 The Beatles – Drive My Car
02 The Beatles – Norwegian Wood (This Bird Has Flown)
03 The Beatles – You Won’t See Me
04 The Beatles – Nowhere Man
05 The Beatles – Think For Yourself
06 The Beatles – The Word
07 The Beatles – Michelle
08 The Beatles – What Goes on
09 The Beatles – Girl
10 The Beatles – I’m Looking Through You
11 The Beatles – In My Life
12 The Beatles – Wait
13 The Beatles – If I Needed Someone
14 The Beatles – Run For Your Life
15 Otis Redding – Respect
16 Otis Redding – Ole Man Trouble
17 Aretha Franklin – Respect
18 Aretha Franklin – Dr. Feelgood (Love Is a Serious Business)
19 Baptiste Trotignon – Drive My Car
20 Lisa Bassenge – Norwegian Wood (This Bird Has Flown)
21 Bryan Ferry – You Won’t See Me
22 Marky Ramone and the Intruders – Nowhere Man
23 Admirals – Think For Yourself
24 Bettye LaVette – The Word
25 Iggy Pop – Michelle
26 Nitty Gritty Dirt Band – What Goes on
27 DJ Style feat. KSS – Girl
28 Lisa Lauren – I’m Looking Through You
29 Diana Krall – In My Life
30 Ben Kweller and Albert Hammond Jr. – Wait
31 Nellie McKay – If I Needed Someone
32 Nancy Sinatra – Run For Your Life

【1973年のピンボール】で流れる他の音たちはこちら!

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