The Shining
スタンリー・キューブリック監督、
1980年の映画『The Shining(シャイニング)』。
少し前に、
この映画を久しぶりに観た。
今ではホラー映画の偉大なる古典なんて言われ方もされているし、
2018年にはアメリカ国立フィルム登録簿に保存されている。
国立フィルム保存委員会 (United States National Film Preservation Board)が、
毎年新しい作品を25本を上限に選出・追加している。
選出されるのは、
公開から最低10年以上経っており、
かつ「文化的・歴史的・芸術的にきわめて高い価値を持つ」とみなされる映画・動画作品。
選出には『われわれがどのような人々かどのような国民かをよく示す作品』という基準が重視されるらしいけれど、
それでこの映画というのはなかなか面白い。
でも、
公開当時は原作者スティーヴン・キングに酷評されたていたりする。
アカデミー賞授賞式前夜に最低の映画を選んで表彰する、
ゴールデンラズベリー賞(ラジー賞 Razzies)にもノミネートされていた。
まあ評価なんていうものは、
時代・人それぞれだからね。
その評価の多数が『概ね同じ』だとしても、
それが自分のものと一致するとは限らない。
それに自分の評価だって、
時間と共に変化したりするものだ。
ただこの映画に関しては、
ボクは初めて観た時から結構お気に入りになったしそれは今も変わらない。
久しぶりに観ると、
多くのシーンが頭の中にこびりついていたことを確認することになる。
そして、
それぞれのシーンは独立して印象に残っている感じなのだ。
それはまるで、
映画というよりも絵画に近い。
Midnight with the Stars and You
ところでこの映画は、
ベルリオーズの幻想交響曲第5楽章をウェンディ・カーロスがアレンジしたもので始まる。
カーロスが手掛けた音楽は、
公式オリジナル・サントラにはこの曲と『Rocky Mountains』の2曲だけが収録されている。
他に使われているのは既成曲で、
例えばバルトークの『弦楽器と打楽器とチェレスタのための音楽Sz.106,BB114』の第3楽章。
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団。
あとはリゲッティ1967年の『ロンターノ』、
これもこの映画で流れるとかなり怖い音楽になる。
エルネスト・ブール指揮、
南西ドイツ放送交響楽団。
更にペンデレツキ、
これもなかなか怖い。
1 ヤコブの夢
(Przebudzenie Jakuba)
2 デ・ナチュラ・ソノリスNo.1
(De Natura Sonoris No.1)
3 デ・ナチュラ・ソノリスNo.2
(De Natura Sonoris No.2)
4 52の弦楽器と2つのテープのためのカノン
(Kanon for 52 strings and magnetic tape)
5 48の弦楽器によるポリモルフィア
(Polymorphia for 48 strings)
6 ウトレーニャ 第2部:キリストの復活-I:エヴァンゲリア
(Utrenja-Part II: Zmartwychwstanie PańskieEwangelia-I:Ewangelia)
5 ウトレーニャ-第2部:キリストの復活-V:カノン・パッシー、ピエシン 8
(Kanon Paschy, Piesn 8)
映画で流れていた演奏かどうかはよくわからないが、
基本ペンデレツキ自身の指揮/ポーランド国立放送交響楽団のもので(1~4)。
5はアントニ・ヴィト指揮/ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団で、
6がアンジェイ・マルコフスキ指揮/ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団。
でもやはり最も印象的なのが、
ラストに流れる曲『Midnight with the Stars and You』。
1934年につくられてリリースされた、
アル・ボウリーの歌声(当時その名前はクレジットされていなかったけど)。
演奏は、
レイ・ノーブル楽団。
ホテルをさまようジャック・トランスが誰もいないはずのゴールド・ルーム(ボール・ルーム)で、
盛大なパーティーが行われているのに出くわすシーンでも流れていた。
ここでジャックがカウンターで呑んでいるのは、
Jack Daniel’sだったなんてことはまあどうでも良いんだけど。
それでラストシーンのホテルの壁の記念写真、
3列×7枚=21枚の写真の中央の写真には満面の笑みをたたえたジャックの姿。
その日付は、
1921年7月4日だ。
曲のリリースとは13年の開きがあるんだけど、
まあそれはそれで。
いずれにしてもジャックは妻と子供に拒絶され受け入れられなかったけど、
最後には1921年に身を置くことなったという解釈もできるわけで。
それはそれで、
ある意味のハッピー・エンドなのかもしれない。
The Shining – The Complete British Dance Band Soundtrack
そんなわけで、
今ボクの部屋に流れているのは『The Shining – The Complete British Dance Band Soundtrack』。
オーバールック・ホテル、
ゴールド・ルームで流れていた曲が収められている。
たまには、
こういった古き良き時代の音楽を聴きたくなったりするのだ。
1 Al Bowlly & Ray Noble & His Orchestra – Midnight, The Stars and You
2 Henry Hall & His Gleneagles Hotel Band – Home
3 Al Bowlly & Ray Noble & His Orchestra – It’s All Forgotten Now
4 Jack Hylton And His Orchestra – Masquerade
Al Bowlly & Ray Noble & His Orchestra – Midnight, The Stars and You
この曲、
邦題は『真夜中、星々と君と』。
作詞・作曲は、
Harry M. Woods, Jimmy Campbell and Reg Connelly。
Midnight with the stars and you
Midnight with the stars and you
Midnight at a rendezvous
Your arms held a message tender
Saying I surrender all my love to you
Midnight brought us sweet romance
I know, for my whole life through
I’ll be remembering you
Whatever else I do Midnight with the stars and you真夜中に星々と君と
―Midnight, The Stars and You-Harry M. Woods, Jimmy Campbell and Reg Connelly
真夜中に星々と君と
真夜中にしめし合わせて落ち合うんだ
君はその腕に優しいメッセージを携える
すべての愛をぼくに捧げると
真夜中は甘いロマンスを運んでくる
ぼくは人生を通じてわかっている
いつまでも君のことを忘れないってね
ぼくに何があっても真夜中に星々と君と
他の3曲も悪くないけど、
やはりラストでも流れるこの曲は最も印象に残る。
そしてある意味ホラー映画にはミス・マッチのようなこの選曲は、
曲そのものの印象を大きく変えてしまったのだ。
それでもこのセンスは、
やはり素晴らしい。
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