【ダンス・ダンス・ダンス】の中のモーツァルト
元気を出すために「フィガロの結婚」序曲をハミングまでした。
ダンス・ダンス・ダンス
でもそのうちに、
それが「魔笛」序曲であるような気がしてきた。
考えれば考えるほど、
その違いがわからなくなってきた。
結局いるかホテルの夢を見ることもなく、
僕はドルフィン・ホテルの15階の部屋で目を覚ます。
自分がどうしようもなく空っぽに感じられ、
何をする気も起きない。
TVで朝のニュースを十五分ほど見て、
浴室に行って顔を洗い髭を剃って元気を出すために「フィガロの結婚」序曲をハミングする。
でもそれがいつの間にか「魔笛」序曲であるような気がしてきて、
考えるほどにその違いがわからなくなる。
まあハミングできるくらいなんだから、
違いがわからなくなるわけがないんだけど。
そんな何をやってもうまくいきそうにない日、
髭を剃っていて顎は切るしシャツの袖のボタンは取れるし…。
それくらい、
ダメな日ということか。
歌劇「フィガロの結婚」K.492 序曲
ここに出てくる「フィガロの結婚」序曲は、
もちろんモーツァルトが1786年に作曲したオペラ「フィガロの結婚」の序曲。
このオペラはフランス劇作家ボーマルシェが、
1778年に書いた風刺的な戯曲をベースにしたものだ。
リブレットを書いたのは、
この後『ドン・ジョヴァンニ』と『コジ・ファン・トゥッテ』も手掛けたロレンツォ・ダ・ポンテ。
ボーマルシェの戯曲『狂おしき一日、あるいはフィガロの結婚』は、
『セビリアの理髪師』の続編。
この『セビリアの理髪師』はロッシーニが1816年にオペラ化したものが有名だけど、
1782年にはジョヴァンニ・パイジエッロが既にオペラ化している。
それでモーツァルト『フィガロの結婚』はウィーンで初演されて、
プラハで大ヒットすることになる。
序曲と全4幕からなるオペラ・ブッファ形式で、
歌詞はイタリア語。
Le nozze di Figaro
歌劇「フィガロの結婚」K.492
Ouverture
序曲
Primo atto
第一幕
01 Duettino:Cinque…dieci… venti…
二重唱:5…10…20
02 Recitativo:Cosa stai misurando
レチタティーヴォ:何を測っているの
03 Duettino:Se a caso Madama la notte ti chiama
二重唱:たとえばもし奥方様が
04 Recitativo:Or bene, ascolta, e taci
レチタティーヴォ:それじゃあ黙って聞いて
05 Recitativo:Bravo, Signor Padrone!
レチタティーヴォ:なるほどお殿様!
06 Cavatina:Se vuol ballare, signor Contino
カヴァティーナ:もし踊りになりたければ
07 Recitativo:Ed Aspettaste Il Giorno Fissato A Le Sue Nozze
レチタティーヴォ:ではあんたは待ったわけかね
08 Aria:La vendetta, oh la vendetta!
アリア:復讐だああ復讐だ!
09 Recitativo:Tutto ancor non ho perso
レチタティーヴォ:まだすっかり負けたわけではなし
10 Duettino:Via resti servita, madama brillante
二重唱:さあお通りあそばせ
11 Recitativo:Va’ la, vecchia pedante
レチタティーヴォ:出てくがいいわ小うるさい婆さん
12 Aria:Non so più cosa son, cosa faccio
アリア:僕はもう自分が何かどうすればよいか分からない
13 Recitativo:Ah son perduto!
レチタティーヴォ:ああもう駄目だ!
14 Terzetto:Cosa sento! tosto andate
三重唱:何たることだ!直ちに行って
15 Recitativo:Basilio, in traccia tosto di Figaro volate
レチタティーヴォ:バジリオ急ぎすぐフィガロを
16 Coro:Giovani liete fiori spargete
合唱:喜びの娘たちよ花をおまき
17 Recitativo:Cos’ e questa commedia?
レチタティーヴォ:この茶番は何だ?
18 Coro:Giovani liete fiori spargete
合唱:喜びの娘たちよ
19 Recitativo:Evviva!
レチタティーヴォ:万歳!
20 Aria:Non più andrai, farfallone amoroso
アリア:もう行けまいぞ愛の蝶よ
Secondo atto
第二幕
01 Recitativo:Vieni, cara Susanna
レチタティーヴォ:こちらへかわいいスザンナ
02 Recitativo:Quanto duolmi, Susanna
レチタティーヴォ:何とも私は悲しいわスザンナ
03 Arietta:Voi, che sapete
アリエッタ:あなた様方はご存じです恋とはどんなものか
04 Recitativo:Bravo! Che bella voce!
レチタティーヴォ:素晴らしいこと!何ていい声!
05 Aria:Venite, inginocchiatevi
アリア:おいでなさい・・・躓いて
06 Recitativo:Quante buffonerie!
レチタティーヴォ:何て道化でしょう!
07 Recitativo:Che novità
レチタティーヴォ:何て珍しいことだ!
08 Terzetto:Susanna, or via, sortite
三重唱:スザンナさあもう出てきなさい
09 Recitativo:Dunque voi non aprite?
レチタティーヴォ:ではそなたは開けぬのか?
10 Duettino:Aprite, presto, aprite
二重唱:開けて早くお開けなさい
11 Recitativo:Oh, guarda il demonietto!
レチタティーヴォ:見てよあの小悪魔!
12 Recitativo:Tutto e come il lasciai
レチタティーヴォ:すべてさっき私がやりおいた通りだが
13 Finale:Esci omai, garzon malnato
フィナーレ:出てこいいい加減に悪童め
14 Susanna!…Signore
スザンナ!…お殿様
15 Susanna, son morta
スザンナ死にそうよ
16 Signori, di fuori
ご存じかな、フィガロ殿
17 Ah, signor…signor…
ああ、お殿様・・・お殿様
18 Voi, signor, che giusto siete
私共の正しいお殿様
Terzo atto
第三幕
01 Recitativo:Che imbarazzo e mai questo!
レチタティーヴォ:それにしてもこれは何たるもつれ!
02 Duettino:Crudel! Perché finora
二重唱:憎いぞ!なぜこれまで私をこのように焦らしおった?
03 Recitativo:E perche fosti meco
レチタティーヴォ:だがなぜ私に今朝はあのようにすげなかったのかね?
04 Recitativo & Aria:Hai gia vinta la causa!…
レチタティーヴォとアリア:あなたはもう訴訟に勝っただと!
05 Recitativo:E decisa la lite
レチタティーヴォ:訴訟は決着ですぞ
06 Sestetto:Riconosci in questo amplesso
六重唱:この抱擁で分かっておくれ
07 Recitativo:Eccovi, o caro amico
レチタティーヴォ:ここにこうしていとしいあなた
08 Recitativo:Andiam, andiam, bel paggio
レチタティーヴォ:行きましょうねえ素敵なお小姓さん
09 Recitativo & Aria:E Susanna non vien!…Dove sono i bei momenti
レチタティーヴォとアリア:スザンナはまだ来ないわ今はどこなのでしょうあの美しい時は
10 Recitativo:Io vi dico, signor
レチタティーヴォ:申し上げやす、お殿様
11 Recitativo:Cosa mi narri!
レチタティーヴォ:大変なお話だこと!
12 Duettino:Canzonetta sull aria…Che soave zeffiretto
二重唱:そよ風によせる・・・いかばかり甘い春風が
13 Recitativo:Piegato e il foglio
レチタティーヴォ:手紙はたたみまして
14 Chorus:Ricevete, o padroncina
合唱:お受け下さい奥方様
15 Recitativo:Queste sono, Madama
レチタティーヴォ:ここにおりますのは、ご領地の娘たちで
16 Finale:Ecco la marcia, andiamo
フィナーレ:そら行進曲だ行くとしよう
Quarto atto
第四幕
01 Cavatina:L’ho perduta…me meschina…
カヴァティーナ:失くしてしまって・・・あたし困ったわ!
02 Recitativo:Barbarina, cos’hai?
レチタティーヴォ:バルバリーナどうしたんだ?
03 Recitativo:Madre!……Figlio!
レチタティーヴォ:お母様!…息子よ!
04 Recitativo:Presto avvertiam Susanna
レチタティーヴォ:スザンナに教えてやらなければ
05 Aria:Il capro e la capretta
アリア:牡の山羊と牝の山羊は
06 Recitativo:Nel padiglione a manca
レチタティーヴォ:そこを行くのは誰だ?
07 Aria:In quegl’anni, in cui val poco
アリア:あの年ごろまだあまりよく
08 Recitativo & Aria:Tutto e disposto…Aprite un po’ quegl’occhi
レチタティーヴォとアリア:すべて準備は整った…少しばかりその目を開け
09 Recitativo:Signora, ella mi disse
レチタティーヴォ:奥方様、震えておいでですね
10 Recitativo & Aria:Giunse al fin il momento…Deh, vieni, non tardar
レチタティーヴォとアリア:さあおいで遅くならず素敵な喜びよ
11 Recitativo:Perfida! E in quella forma
レチタティーヴォ:不実な女め!ああして俺を騙していたのか?
12 Finale:Pian pianin le andro più presso
フィナーレ:そっともっと近くへ行ってみよう
13 Ecco qui la mia Susanna!
さて我がスザンナはこのあたりだ
14 Tutto e tranquillo e placido
すべては静かにして穏やか
15 Pace, pace, mio dolce tesoro
仲直りを僕の大事な宝よ
16 Gente, gente, all’armi, all’armi!
皆の者みんな武器を取れ武器を
全部聴くと3時間前後になるんだったかな?
いつも聴くというよりは流すくらいになってしまうけど。
カール・ベーム/ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団
そんなわけで「フィガロの結婚」序曲、
カール・ベーム指揮/ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団で。
歌劇「魔笛」K.620 序曲
もう1曲は、
モーツァルト生涯最後のオペラ「魔笛」序曲。
オペラと言っても、
ドイツ語による歌芝居や大衆演劇の一形式ジングシュピールだけど。
リブレットは、
劇場経営者エマヌエル・シカネーダー。
シカネーダーは俳優・歌手・演出家でもあり、
自身でもパパゲーノを演じている。
初演はモーツァルト死の66日前、
1791年9月30日にシカネーダーのアウフ・デア・ヴィーデン劇場。
指揮は、
モーツァルト自身。
シカネーダーは、
パパゲーノを演じている。
あとモーツァルトの妻コンスタンツェの姉、
ヨゼーファ・ホーファーが夜の女王の役を演じている。
この『魔笛』は、
モーツァルトも会員だったフリーメイソンと強い関係を持っているというのは有名な話。
フリーメイソンの理念は、
自由・平等・友愛の3つ。
位階も3つで入信式で戸を3回叩く等々、
3という数字と特別な関係を持っている。
序曲は、
主調が変ホ長調というフラット記号(♭)が3つの調。
序曲冒頭のAdagio部分では、
和音が3回鳴り響く。
中間部でも、
短・長・長で成る3つの同一和音の組み合わせが全管楽器によって3回繰り返される。
3という数字は序曲だけではなく、
全体が3と関係するように様々な工夫がなされているらしい。
でも、
二幕構成なんだけど。
Die Zauberflöte KV620
歌劇「魔笛」K.620
Ouvertüre
序曲
Erster Aufzug
第一幕
01 Introduktion:Zu Hilfe! Zu Hilfe!
導入部:助けてくれ
Dialog – Wo bin ich?
ダイアローグ – ここはどこだ?
02 Arie: Der Vogelfanger bin ich ja
アリア:俺は鳥刺し男でござる
Dialog – He da!
ダイアローグ – おいおい!
03 Arie:Dies’ Bildnis ist bezaubernd schön
アリア:何という美しい絵姿だろう
Dialog – Ruste dich mit Mut und Standhaftigkeit
ダイアローグ – あなたは勇者と忍耐を待たねばなりません美しい若者よ
04 Rezitativ und Arie:O Zittre Nicht, Mein Lieber Sohn!
レチタティーヴォとアリア:恐れずに若者よ!
05 Quintett: Hm! hm! hm!
5重唱:ム!ム!ム!
06 Terzett:Du feines Taubchen, nur herein!
3重唱:可愛い人よこっちへおいで!
Dialog – Mutter, Mutter!
ダイアローグ – お母様お母様!
07 Duett: Bei Mannern, welche Liebe fuhlen
2重唱:を知るほどの男の方々は
08 Finale: Zum Ziele fuhrt dich diese Bahn
フィナーレ:この道はお前を目的へと導く
09 Rezitativ:Die Weisheitslehre dieser Knaben
レチタティーヴォ:この少年たちの賢い教えを
09 Andante:Wie stark ist nicht dein Zauberton!
おまえの魔法の調べは何と力強いのだろう
10 Andante:Schnell Fusse, rascher Mut schutzt vor Feindes List und Wut
早く行きましょう勇気を出しましょう
11 Allegro maestoso:Es lebe Sarastro, Sarastro lebe!
アレグロ・マエストーソ:ザラストロ万歳!ザラストロ万歳!
12 Allegro:Na, stolzer Jungling, nur hierher!
アレグロ :さあ高慢ちきな若いのこっちへ来い!
13 Presto:Wenn Tugend und Gerechtigkeit
プレスト:徳と正義が
Zweiter Aufzug
第二幕
01 Marsch Der Priester
僧侶達の行進
Dialog – Ihr, in dem Weisheitstempel eingeweihten
ダイアローグ – 偉大なる神々オジリスとイージスに使えるおのおの方!
02 Arie Und Chor:O Isis Und Osiris
アリアと合唱:おおイシスとオシリスの神よ
Dialog – Eine schreckliche Nacht!
ダイアローグ – いやな夜だ!パパゲーノ!
03 Duett:Bewahret Euch Vor Weiberstücken
2重唱:女の企みから身を守れ
Dialog – He, Lichter her!
おい!おい!明かりをこちらにくれないか!
04 Quintett:Wie? Wie? Wie?
5重唱:どうしてこんな恐ろしい所に!
Dialog – Jungling!
ダイアローグ – 美しい若者よ!
05 Arie: Alles fuhlt der Liebe Freuden
アリア:恋すりゃ誰でも楽しいものだ
Dialog – Zuruck!
ダイアローグ – 下がれ!
06 Arie:Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen
アリア:復讐の心は地獄のように燃え
Dialog – Morden soll ich?
ダイアローグ – 人を殺さなければならない?
07 Arie:In diesen heil’gen Hallen
アリア:この神聖な神殿の中では
Dialog – Hier seid ihr euch beide allein uberlassen
ダイアローグ – そなたたちはここに2人きりで残される
08 Terzett: Seid uns zum zweiten Mal willkommen
三重唱:お二人ともよく来ましたね
Dialog – Tamino, wollen wir nicht speisen?
ダイアローグ – タミーノご馳走になろうじゃありませんか?
09 Arie:Ach, ich fühl’s, es ist verschwunden
アリア:愛の喜びは露と消え
Dialog – Nicht wahr, Tamino, ich kann auch schweigen
ダイアローグ – どうだいタミーノわしもいざという時は
10 Chor der Priester: O, Isis und Osiris, welche Wonne!
司祭の合唱:お、おおイシスよオシリスよ
Dialog – Prinz, dein Betragen war bis hierher mannlich und gelassen
ダイアローグ – 王子よお前の態度はこれまで立派で男らしかった
11 Terzett:Soll ich dich, Teurer, nicht mehr sehn?
三重唱:愛する人よもうあなたを見られないでしょうか?
Dialog – Tamino! Tamino!
ダイアローグ – タミーノ!タミーノ!
12 Arie:Ein Madchen oder Weibchen wunscht Papageno sich!
アリア:パパゲーノ様が欲しいのは
Dialog – Da bin ich schon, mein Engel!
ダイアローグ – さあ来ましたよ、私の天使よ!
13 Finale:Bald prangt, den Morgen zu verkunden
フィナーレ:まもなく朝を告げ知らすため
14 Adagio:Der, welcher wandert diese Strasse voll Beschwerden
アダージョ:苦難もてこの道をたどり来るもの
15 Andante:Tamino mein!
アンダンテ:私のタミーノ!
16 Marsch. Adagio:Wir wandelten durch Feuersgluten
行進曲 アダージョ:私たちは炎の灼熱の中を通り
15 Allegro:Papagena! Papagena! Papagena!
アレグロ:パパゲーナ!パパゲーナ!パパゲーナ!
Pa-Pa-Pa-Pa-Pa-Pa-Papagena!
パパパパパパ・パパゲーナ!
16 Moderato:Nur stille, stille, stille, still
モデラート:静かに静かに静かに静かに
17 Rezitativ. Andante. Allegro:Die Strahlen der Sonne vertreiben die Nacht
レチタティーヴォ アンダンテ アレグロ:太陽の輝きが夜を追い払い
カール・ベーム/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
そんなわけで「魔笛」序曲、
こちらもカール・ベームの指揮。
オーケストラは、
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団。
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