Blue Valentine
今回のクリスマス・ソングは、
トム・ウェイツ。
1978年リリースのアルバム、
『Blue Valentine』に入っている曲。
裏ジャケットに写っているT-Bird、
この車はトムが所有していたもの。
ボディに『Blue Valentine』と入っているけど、
それがこのアルバムのタイトルになった。
トムと一緒に写っているのは、
当時の恋人リッキー・リー・ジョーンズ。
1979年リリースの、
『Chuck E.’s In Love』が全米4位になったのは覚えている。
Christmas Card from a Hooker in Minneapolis
それで、
曲は『Christmas Card from a Hooker in Minneapolis』。
ビート・ジェネレーション以降のアメリカを代表する作家の1人、
チャールズ・ブコウスキーの『The Roominghouse Madrigals』という詩集がある。
その中に、
『Charlie, I’m pregnant』という一篇がある。
それを下地にしたのが、
この曲の歌詞だ。
という噂が、
ネット上ではいくつか存在してる。
ただこの噂、
ありそうで実はない話だったはずだ。
だから曲のクレジットは、
もちろんトム・ウェイツになっている。
Inspilation by…
みたいなものも当然何もない。
Hey Charley I’m pregnant
Tom Waits – Christmas Card from a Hooker in Minneapolis
And living on 9th Street
Right above a dirty bookstore
Off Euclid Avenue
And I stopped takin’ dope
And I quit drinkin whiskey
And my old man plays the trombone
And works out at the track
ねえチャーリー
あたし妊娠しているのよ
今は9番街に住んでいるの
汚い本屋の上
ユークリッド・アヴェニューの外れのね
クスリも止めたし
酒も止めたわ
旦那はトロンボーン吹きで
トラックで運動もしている
と始まるこの曲、
クリスマスカードに書かれた元彼女からのメッセージという感じか。
今の私がいかに幸せか、
その様子が綴られている。
やがて、
実はあなたのことを思い出すのよと展開する。
そして最後、
案の定彼女の幸せ話は作り話だと告白するという物語。
Hey Charley for Chrissakes
Tom Waits – Christmas Card from a Hooker in Minneapolis
Do you wanna know the Truth of it?
I don’t have a husband
He don’t play the trombone
And I need to borrow money
To pay this lawyer
And Charley, hey
I’ll be eligible for parole
Come Valentine’s Day
ねえチャーリー
ところで本当のことを知りたい?
旦那なんていないのよ
トロンボーンなんか吹いてないわ
私お金を借りたいの
弁護士に払うためのね
ねえチャーリー
そうすればあたし仮出所できるの
ヴァレンタインがくればね
彼が唄うと、
本当に切なさが拡大する。
このクリスマス・カードを受け取ったチャーリーは、
いったいどう思ったんだろう?
お金を貸してあげて、
ヴァレンタインの頃に再会したんだろうか?
それとも、
無視したんだろうか?
それ以前に、
このクリスマス・カードは本当に彼の元に届いたんだろうか?
昔の彼女のことが忘れられない男の、
ただの願望・妄想だったりしてね。
他のヴァージョン
70年代、
トム・ウェイツはライヴでこの曲を『Silent Night』とのメドレーで良く演っていた。
その時の音源があって、
観客は最初笑っているけどやがて静かになるという素晴らしいパフォーマンスだ。
あとカヴァーとなると、
女性がこの曲を演っているヴァージョンがある。
トム・ウェイツのトリビュート・アルバム、
2000年リリースの『New Coat Of Paint (Songs Of Tom Waits)』で登場する。
唄っているのは、
ニュー・ポルノグラファーズのメンバーだったニーコ・ケース。
これはこれで、
ありだな。
というわけで…
今回のクリスマス・ソングは、
トム・ウェイツ。
アルバム『Blue Valentine』に入っている、
『Christmas Card from a Hooker in Minneapolis』。
オリジナルとライヴ音源、
ニーコ・ケースのカヴァーをお届けしました。
おまけ
そういえば、
この曲の中に『リトル・アンソニー&ジ・インペリアルズのレコード』が出てくる。
And I still have that record
Tom Waits – Christmas Card from a Hooker in Minneapolis
Of Little Anthony & the Imperials
どのレコードなんだろう?
いずれにしてもプレイヤーがないから彼女は今は聴くことができないけど。
取り敢えず、
1964年USチャートで6位になったシングル『Goin’ Out of My Head』でも。
もう1曲のおまけは、
リッキー・リー・ジョーンズの『Chuck E.’s In Love』。
この曲のもとになったエピソードがあるんだけど、
知っている人は知っている…のは当たり前か。
彼女とトムが同棲していた頃、
一緒につるんでいたのがチャック・E・ワイス(チャッキー)という人物。
リッキー・リー・ジョーンズが出演していたクラブ、
『トルバドール』で皿洗いをしていた人。
彼は突然姿を消してしまったんだけど、
ある日電話が2人のもとに架かってくる。
チャッキーはデンバーにいて、
そこで女の子に恋をしているという。
電話を切ったトムは、
彼女に『Chuck E.’s in Love』と言ったそうだ。
それが、
この曲の元ネタになったという話だ。
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